「パチンコ・パチスロ」「競馬」といった賭け事にのめり込んでしまうギャンブル依存症は、国内で推計320万人もの方々が抱えている問題だとされています。この依存症は、ご本人だけでなく、家族や職場など身近な人々をも巻き込み、深刻な状況を引き起こしかねません。だからこそ、周囲の方々がごく初期の異常に気づき、適切な治療へ導くことが非常に重要になってきます。しかし、どこからが「やりすぎ」で、どこからが「依存症」なのか、その線引きが難しく、気付いた時には重症化しているケースも少なくないのが現状です。
専門家の方々は、身近な人が依存症である可能性を判断するための簡易チェックリストを作成し、その積極的な活用を呼びかけています。この記事では、2019年6月5日時点の情報をもとに、依存症の実態と、ご家族や周囲の方々がどのように向き合うべきかを詳しくお伝えします。
🥺家族が最も翻弄される「否認の病」の実態
ギャンブルにのめり込む人を支援するNPO法人「ホープヒル」の町田政明代表(66)は、この依存症によって「最も翻弄されるのは家族」だと強く指摘しています。横浜市旭区の事務所で毎週土曜日に開かれている家族教室では、ギャンブルに苦しむ方の家族が「どのように関わればよいか分からない」といった切実な悩みを共有し合っているのです。
教室に通う60代の女性は、30代の息子さんが大学浪人中にパチスロを覚えて以来、あらゆるギャンブルに手を出すようになり、嘘をつかれてお金をせびられたり、巨額の借金を肩代わりしたりした経験をお持ちでした。数年前に藁にもすがる思いで教室に参加するまで、女性は「ギャンブル依存症という病気があることすら知らなかった」と当時の心境を語っています。
長年、カウンセラーとして依存症治療施設で勤務されてきた町田代表は、「家族が正しい知識を身につけて、どう対応するべきかを学ぶことが肝心」だと強調されています。また、「最終的には、ギャンブルをする自由を与えた上で、ご本人自らが『やらない』という選択肢を選ぶことが必要であり、家族はあくまで見守る側である」との考えを示されました。ホープヒルでは、神奈川、広島、愛媛などの各地域でも定期的に家族教室を開催しています。
また、家族向けの自助グループ「ギャマノン」も全国約170カ所で定期的なグループミーティングを開いており、匿名で安心して参加できます。精神科医で北星学園大学の田辺等教授は、家族の方々が民間団体や各都道府県の精神保健福祉センターなどが開催する家族教室などに積極的に足を運ぶことを推奨されています。
🚨気づきにくいからこそ活用したい!LOSTの簡易チェックリスト
ギャンブル依存症は、ご本人に「自分はいつでも引き返せる」「病気ではない」と否定させ、なかなか認めようとしないことから「否認の病」とも呼ばれています。アルコールや薬物依存と異なり、ご家族であっても異変に気づくのが遅れがちだという特徴も、問題をより深刻にしています。「巨額の借金を抱えてから、ようやく相談に来られる方が多い」と、債務整理やカウンセリングも専門とする安藤宣行司法書士は、相談者の方々の傾向をこのように語っています。
こうした背景を受け、依存症の当事者やご家族を支援する民間団体と専門家の方々は、依存の傾向を把握できる簡易テストを共同で開発しました。通称「LOST(ロスト)」と呼ばれるこのテストは、以下の4つの質問から成り立っています。
L(Limit):予算や時間の制限を守れない
O(Overuse):勝っても次のギャンブルに使う
S(Secret):ギャンブルをしたことを誰かに隠す
T(Try to get back):負けてもすぐに取り返したいと思う
直近の1年間でこれらの質問のうち2つ以上が当てはまる場合、「危険度が高い」と判断されます。専門家が診断に用いる「DSM-5(ディーエスエム・ファイブ)」という精神疾患の国際的な診断基準は、質問事項が多くてご家族には使いにくい面がありました。LOSTの開発に携わった国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦・薬物依存研究部長は、LOSTが「治療が必要な患者なのかどうかをご家族が区別する際に役立てられる」と期待を寄せられています。
また、開発に加わった公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表(54)は、無料対話アプリ**LINE(ライン)**でもこの診断ができるようになっていることに触れ、「ご家族やご友人で『少しやりすぎではないか?』と不安を感じた場合は、ぜひ利用してほしい」と呼びかけています。
📊ギャンブル依存の実態と職場の役割
日本医療研究開発機構などの研究班が2017年に発表した「国内のギャンブル等依存に関する疫学調査」によると、生涯で依存症が疑われる状態になった経験がある成人は3.6%にのぼり、過去1年間に絞っても0.8%の方が該当しています。最もお金をつぎ込んだ対象は「パチンコ・パチスロ」がトップで、過去1年間につぎ込んだ金額の平均はなんと約70万円にも達しました。この調査結果からは、ギャンブル依存が決して他人事ではない、身近な問題であることが浮き彫りになるでしょう。
また、依存症の兆候にいち早く気づくのは、職場の同僚であることも少なくありません。近年は、従業員の精神疾患やストレスを支援するプログラム「EAP(イーエーピー)」(従業員支援プログラム)を導入する企業が増えており、ギャンブル依存症への支援も拡充されつつあります。
日本での普及を目指す「国際EAP協会」は、依存症などを専門とする久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)と2018年から提携を始めました。これにより、悩みを抱える従業員の方をすみやかに専門医療機関につなげられる体制が整備されました。同協会の市川佳居理事長は、「予防的なカウンセリングの実施や専門家の紹介を通じて、職場が回復を見守ることで、ご本人が仕事を続けられるようになる」というメリットを説明されています。
私見として、ギャンブル依存症は、個人の問題として片付けずに、社会全体で取り組むべき「病気」として認識する必要があると考えます。簡易テストの活用、家族の学び、そしてEAPのような職場の支援が連携することで、早期発見・早期治療の体制が強化され、「否認の病」から脱却できる可能性が高まるでしょう。
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