日本の北の雄、北海道大学が今、大きな変革の荒波の中にいます。2019年11月28日現在、北大は旧帝国大学としてのブランド力に甘んじることなく、世界中の優秀な頭脳を惹きつけるための挑戦を続けているのです。志願者数は例年1万人規模を維持しており、倍率も4倍前後と安定していますが、その視線はすでに国内の枠を超え、ロシアや北米、ベトナムへと向けられています。
特筆すべきは、その圧倒的な「県外出身者」の多さでしょう。特に農学部や獣医学部では、学生の9割以上が北海道外から集まっており、まさに日本全国から志の高い若者が集う学び舎となっています。SNS上でも「憧れのキャンパスライフ」として語られることが多い北大ですが、実態は華やかなイメージ以上に、泥臭く、そして極めて実践的な「実学」を重んじる場所なのです。
世界が認める研究力と「現場主義」の融合
北大の強みは、2019年の「ネイチャー・インデックス」で国内6位にランクインするほどの実績に裏打ちされています。特に医学や化学、生命科学の分野では、世界中の研究者に引用される質の高い論文を次々と発表しており、その知見は世界標準と言えます。ここで言う「引用」とは、他の学者が自分の論文を書く際に、その研究を信頼できる根拠として紹介することであり、研究の価値を示す重要な指標です。
クラーク博士から受け継がれた「実学」の精神は、最新のテクノロジーとも融合しています。例えば、岩見沢市やNTTグループと連携した無人トラクターの走行実験や、センサーを活用したスマート農業の推進などがその一例です。単なる机上の空論ではなく、実際のフィールド(現場)で理論を形にする力こそが、北大を唯一無二の存在へと押し上げている理由ではないでしょうか。
企業との共同研究も加速しており、2017年度には678件に達しました。森永乳業との母子健康調査や、セコマ(セイコーマート)との入院患者向けアイス開発など、私たちの生活に直結する成果が生まれています。日立製作所の担当者が語るように、課題先進地である北海道で解決策を見出すことは、10年後の日本を救うヒントになるはずです。
ベンチャー創出の壁と組織の揺らぎ
一方で、課題も浮き彫りになっています。2016年度には14社を数えた「北大発ベンチャー」の認定数が、2019年度は現時点でわずか1社に留まるなど、起業の勢いに陰りが見えているのです。この「ベンチャー」とは、大学の研究成果を基に新しいビジネスを行う企業を指しますが、資金力のある大企業との連携に依存しすぎている現状が、独自路線の開拓を阻んでいるのかもしれません。
この状況を打破するため、大学側は若手研究者の早期登用や、学部を越えた教育プログラムの構築を急いでいます。しかし、大学運営のトップである総長が不在という異例の事態が続いており、学内の混乱を懸念する声も上がっています。2018年末からの騒動により、現在は理事が職務を代行していますが、文部科学省からもガバナンス(組織を統治する仕組み)の不備を指摘される厳しい局面です。
編集者の視点から言えば、こうした内紛はせっかくの素晴らしい研究成果や経営努力を相殺しかねない、実にもったいない事態です。北の大地が持つ無限のポテンシャルを最大限に活かすためには、組織としての足場を早急に固め直すことが不可欠でしょう。未来の日本を牽引するリーダーを育む場として、北大が再び一丸となって上昇気流に乗ることを切に願っています。
コメント