不敵な笑みを浮かべた「ガイ・フォークス」の仮面が、今や香港で自由を求める民主派勢力の象徴となっています。1605年にイギリスの議会爆破を企てた実行犯の顔が、2019年の現代において抑圧への抵抗として蘇りました。香港政府が2019年10月5日に「覆面禁止規則」を施行し、デモ参加者の素顔をさらそうとしたことで、市民の怒りはさらに激しく燃え上がっています。SNS上でも、この規則がプライバシーの侵害にあたるという批判や、自由を求める切実な声が世界中に拡散されているところです。
こうした動きに呼応するように、アメリカのペンス副大統領は2019年10月24日の演説で、中国を「監視国家」と厳しく非難しました。実際に米商務省は、2019年10月7日に顔認証や画像認識の最先端技術を持つハイテク企業8社を取引禁止リストに追加しています。これは、新疆ウイグル自治区での人権侵害に自国の技術が加担することを防ぐための措置です。ハイテク技術が平和のためではなく、国民を監視する武器として使われる現状に、国際社会の厳しい視線が注がれています。
輸出規制の強化とハイテク覇権を巡る火花
アメリカは現在、輸出管理規則(EAR)を大幅に強化し、中国を念頭に置いた最先端技術の流出防止に躍起になっています。EARとは、安全保障の観点から特定の技術や製品の輸出を制限するルールのことで、これが強化されたことで中国企業の活動は大きな制約を受けています。特に2019年8月からは、華為技術(ファーウェイ)をはじめとする中国大手5社の製品を政府調達から排除しており、2020年8月にはその範囲がさらに拡大される予定です。
米中貿易交渉の第1段階が合意に向かいつつある一方で、安全保障や技術の分野での主導権争いは、終わりが見えない状況が続いています。トランプ大統領は選挙を意識し、農産物の輸出拡大に強い関心を示していますが、ペンス副大統領や国防総省は、覇権を安易に譲らないという強い意志を崩していません。2018年10月の第1弾演説で打ち出された強硬な姿勢は、2019年10月の第2弾演説で一部融和的な表現が含まれたものの、戦略の本質は変わっていないと見るべきでしょう。
中国経済の失速と日本の「いい湯加減」な立ち位置
米中新冷戦が加速する中、中国経済には明らかな陰りが見え始めています。国際通貨基金(IMF)による2019年10月時点の予測では、2020年の中国の実質成長率は5.8%まで下方修正されました。経済成長の節目とされる6%を割り込む見通しとなり、貿易摩擦による打撃が深刻化しています。トランプ政権が強気な姿勢を貫けるのは、こうした中国側の足元を見透かしているからに他なりません。中国としては、一度合意を結んで体勢を立て直し、長期戦に備える狙いがあるのでしょう。
激しさを増す大国同士の衝突ですが、私個人としては、この緊張感が日本にとって意外にも「追い風」になっている側面があると感じます。米国との強固な同盟を維持しながらも、経済的利害から中国からも歩み寄りを求められる今の状況は、日本が外交的な自由度を広げるチャンスです。これを「いい湯加減」と表現するのは皮肉めいていますが、現状を冷静に分析すれば、日本が橋渡し役として国際社会での存在感を高められる絶好の機会だと言えるのではないでしょうか。
しかし、この心地よい湯加減が永遠に続くわけではありません。2020年の米大統領選の結果次第では、米中関係が劇的に変化する可能性もあります。特に中道派の候補者が勝利した場合、過去の訪中時の柔軟すぎる対応を不安視する声も根強く存在します。一方で、米議会では超党派で対中強硬姿勢が強まっており、「香港人権・民主主義法案」などの審議が急速に進んでいます。新冷戦の行方は、自由と民主主義の試金石となる香港の動向に、より一層左右されることになるでしょう。
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