2019年11月18日、政府が男性国家公務員に対して育児休業の取得を強力に促す新制度の検討を開始しました。業務への影響を最小限に抑えるための事前計画作成や、部下の取得率を上司の査定に反映させる仕組みを導入し、1ヶ月以上の取得を定着させる狙いです。
制度の背景には、深刻な男女の育休格差があります。2018年度のデータを見ますと、育休給付金を受給した女性が34万5千人であるのに対し、男性はわずか1万9千人。この圧倒的な偏りは、少子化を加速させるだけでなく、職場での女性のキャリア形成を阻む大きな要因となっています。
安倍晋三首相は「国がリーダーシップを発揮することが、社会全体の意識改革に繋がる」と強調しており、自民党内でも民間企業への義務化を見据えた法改正の議論が加速しています。SNS上では「ようやく時代が動いた」という期待の一方で、「休めても何をすればいいか分からない」といった不安の声も渦巻いています。
「取れない」のではなく「取るつもりがない」男性たちの本音
議論が盛り上がる一方で、当事者である男性の意識には冷ややかな現実が横たわっています。2019年の連合による調査では、育休未取得者のうち「取りたかったが断念した」層は3割に留まり、残りの7割はそもそも取得を検討すらしていないことが判明しました。
さらに、2016年の社会生活基本調査では、6歳未満の子を持つ夫の約65%が育児に、約68%が家事に全く時間を割いていないという衝撃的な実態も浮き彫りになっています。家事・育児という「家庭の責任」が、依然として女性の肩に重くのしかかっているのが日本の現状です。
私は、この数字こそが義務化の「必要性」と「危険性」の両面を物語っていると感じます。意識が低いからこそルールで縛るべきという意見は正論ですが、何の準備もなしに家庭へ放り出された男性が、果たして戦力になれるのでしょうか。
スキルなき義務化が招く「家庭の悲鳴」という副作用
2004年から父親支援を続けるNPO法人新座子育てネットワークの坂本純子代表理事は、男性への教育不足を懸念しています。女性が妊娠中からスキルを学ぶ機会を持つのに対し、男性にはそうした支援がほとんど提供されておらず、知識の格差が広がっているためです。
「育児スキルを学ばないまま育休を強制しても、家庭内は混乱し、悲惨な状況になりかねない」と坂本さんは警鐘を鳴らします。育児は仕事以上に想定外の連続であり、対応できないストレスが矛先を誤れば、最も守るべき赤ちゃんの安全さえ脅かしかねないというのです。
男性が孤独に悩みを抱え込む「パパの孤立」も無視できません。単に休みを与えるだけでなく、家事・育児のノウハウを習得し、地域で相談できる場所を整えることが先決でしょう。拙速な義務化で子供が犠牲にならないよう、血の通った制度設計が今こそ求められています。
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