ウィーワークの挫折とユニコーン神話の崩壊?ウォール街が描いた「偽りの成長」の正体

2019年、世界中の投資家が熱狂した「成長企業」の象徴が、わずか2カ月という短期間で「再建」を余儀なくされる事態に陥りました。その主役は、シェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーです。2019年10月に会長へと就任したマルセロ・クラウレ氏は、生き残りをかけて全従業員の2割を削減する大ナタを振るい、2021年の黒字化を目指して奔走しています。

かつて、米金融大手のJPモルガン社内では「マーチング・オーダー」という言葉が飛び交っていました。これは軍事用語で「前進あるのみ」を意味しますが、金融業界では「リスクを承知でトップ肝煎りの案件を成立させろ」という強引な指令を指していました。こうした過剰なまでの期待が、実力以上の成長神話を作り上げてしまったのかもしれません。

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巨大銀行が競った創業者の「歓心」と膨らんだ泡

ウィーワークの新規株式公開(IPO)において、主幹事という実務を取り仕切る重要な座を狙い、銀行各社は驚くべき行動に出ました。バンク・オブ・アメリカは拠点改修をウィー社に依頼し、ゴールドマン・サックスは同社の価値を最大90,000,000,000ドル、日本円で約9兆8000億円と見積もりました。専門用語である「主幹事」とは、企業が上場する際に事務手続きや株の販売を主導する、銀行にとって名誉と利益の象徴です。

しかし、株式市場の目利きたちは、中身の伴わない高評価を見逃しませんでした。結局、2019年に計画されていたIPOは頓挫し、資金繰りに行き詰まった同社はソフトバンクグループの支援下で経営再建を歩むこととなりました。直近の企業価値は8,000,000,000ドル程度まで急落しており、ウォール街が描いた夢の跡が虚しく残っています。

アラムコ上場にも影を落とす「忖度」の構造

こうした過剰な演出は、ウィー社に限った話ではありません。サウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコのIPOを巡っても、ウォール街のトップバンカーたちは必死の攻勢をかけました。2019年4月に開催された説明会にはJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOも出席し、会場を盛り上げましたが、その裏には巨大な手数料ビジネスを独占したいという思惑が透けて見えます。

提示された1兆6000億ドルから1兆7000億ドルという企業価値に対し、欧米の投資家は「高すぎる」と冷ややかな反応を示しました。この価格設定は、サウジの皇太子ムハンマド氏への配慮、いわゆる「忖度」が働いた結果だと囁かれています。結局、同社は海外勢を頼れず、国内での売り出しを優先せざるを得ない状況に追い込まれました。

SNS上では「ユニコーン企業という言葉自体が、投資家を煽るための魔法の杖になっているのではないか」といった厳しい意見が相次いでいます。利益を度外視して規模だけを追うビジネスモデルに対し、ユーザーや個人投資家からも「持続可能性がない」という不信感の声が噴出しているのが現状でしょう。

利益なき「将来性」への厳しい審判

企業価値が10億ドルを超える未公開企業、通称「ユニコーン」が増殖した背景には、世界的な金融緩和で余ったマネーの存在があります。低金利の影響で本業の儲けが薄い銀行にとって、調達額の最大7%にも及ぶIPO手数料は、喉から手が出るほど欲しい果実でした。2019年11月上旬までに米大手5行が手にした手数料は17億ドルに達し、世界シェアの3割を占めています。

しかし、鳴り物入りで上場したウーバーは初値から30%安、リフトやスラックにいたっては40%を超える暴落を見せています。私は、こうした現状は「金融機関の強欲」が招いた必然の結果だと考えます。実体経済と乖離した価値を吊り上げ、一般の投資家にバトンを渡そうとする姿勢は、市場の健全性を著しく損なうものです。

JPモルガンのダイモン氏は2019年11月のインタビューで、一連の混乱について「学びがあった」と苦渋の表情で語りました。金融のエリートたちが「反省」を口にせざるを得ないほど、ユニコーン神話の崩壊は深刻な衝撃を与えています。これからは、単なる「将来の期待」ではなく、着実に利益を生む力が厳しく問われる時代になるに違いありません。

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