東南アジアで目覚ましい経済発展を遂げるベトナムから、驚きのニュースが飛び込んできました。同国最大の民間複合企業であるビングループが、新たにテレビ事業への参入を正式に表明したのです。不動産開発で圧倒的な地位を築いた同社ですが、今やその野心は住まいという「箱」を超え、人々の生活を彩るデジタル家電の領域へと急速に拡大しています。
今回、生産を主導するのはビングループ傘下でスマートフォン製造を担うビンスマート社です。ハノイ近郊のホアラック工業団地に位置する最新鋭の工場では、すでに生産ラインが稼働を開始しています。市場に投入されるのは5種類のモデルで、すべての機体に米グーグル社のOSである「Android TV」が搭載される予定となっており、利便性の高さが期待されます。
ここで注目したいのが「Android TV」というキーワードです。これはテレビ向けに最適化された基本ソフトのことで、スマートフォンと同様に多様なアプリをインストールし、YouTubeやNetflixといった動画配信サービスを大画面でシームレスに楽しめるのが特徴です。ビングループはこの先進的なプラットフォームを武器に、家庭内のエンターテインメントの中心を獲りにいこうとしています。
SNS上では、自国ブランドの躍進に沸くベトナム国民の声が目立ちます。「ついに家の家電がすべてビン製品になる日が来た」「高品質な国産テレビなら応援したい」といった好意的な反応が相次いでおり、ブランドへの信頼感は絶大です。一方で、「世界的な大手メーカーがひしめく中で、価格競争力がどこまであるか注目したい」という冷静な分析も見受けられます。
製造業の旗手へ!ビングループが推し進める驚異の多角化戦略
ビングループの歩みを振り返ると、そのスピード感には目を見張るものがあります。2017年9月2日に自動車生産への参入を宣言したかと思えば、わずか2年足らずの2019年6月にはベトナム初の国産ブランド車を発売しました。現在は年間25万台の生産体制を目指しており、文字通りベトナム製造業のシンボルへと登り詰めようとしています。
さらに、2018年12月には「Vスマート」ブランドでスマートフォン市場にも殴り込みをかけました。すでにスペインやミャンマー、ロシアといった海外市場への輸出も展開しており、2020年初めには受託生産を含めて年間1億2500万台という途方もない生産能力を確保する計画です。このスマホ事業の成功が、今回のテレビ参入への強力な足掛かりとなったのは間違いありません。
私は、今回のテレビ事業参入は単なる製品ラインナップの拡充ではなく、巨大なエコシステム(生態系)の構築だと考えています。同社は今後、エアコンや冷蔵庫といった白物家電の生産も視野に入れているようです。これらがすべてネットで繋がれば、ビングループの不動産物件に住み、同社の車に乗り、同社の家電で暮らすという「ビン・ライフ」が完結することになるでしょう。
価格設定はまだベールに包まれていますが、2019年12月2日現在の市場環境を見る限り、ビングループが目指すのは「国民に寄り添うハイテク」です。自国への誇りと最新技術を融合させた彼らの挑戦が、アジアの家電市場の勢力図を塗り替える日は近いかもしれません。一民間企業が国家の産業構造を変えていくダイナミズムから、今後も目が離せそうにありません。
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