IT業界の巨人、マイクロソフトが再びスマートフォンの世界へと帰ってきます。2019年10月2日にニューヨークで開催された製品発表会にて、同社は2020年に新型デバイス「Surface Duo」を投入することを電撃発表しました。過去に2度の撤退を経験している同社にとって、これはまさに背水の陣とも言える三度目の正直な挑戦となります。
かつての失敗を知るファンからは、SNS上で「ついに戻ってきた!」「今度こそWindows Mobileの二の舞にならないでほしい」といった期待と不安が入り混じった声が上がっています。特筆すべきは、自社のアイデンティティでもあった「Windows」ではなく、競合であるグーグルの「Android」をOSに採用した点でしょう。この柔軟な姿勢こそが、新生マイクロソフトの強みと言えます。
2画面がもたらす「創造性」の劇的進化
今回発表された「Surface Duo」は、5.6インチの液晶画面を2つ備えた折りたたみ式の形状が最大の特徴です。パノス・パネイ最高製品責任者は、このデバイスを単なる電話ではなく「ポケットに入るSurface」と定義しました。1枚の大きな画面を折るのではなく、独立した2枚の画面を繋ぐことで、直感的なマルチタスク操作を実現しようとしています。
ここで言う「マルチタスク」とは、複数のアプリを同時にスムーズに動かすことを指します。例えば、左の画面でビデオ会議アプリ「Teams」を使いながら、右の画面で資料を作成するといったビジネスシーンが想定されています。情報の「消費」に特化しがちな従来のスマホに対し、ビジネスにおける「創造」の道具へと進化させようとする同社の明確な意志が感じられます。
SNSでは、この独特な2画面構造に対して「任天堂のDSみたいで親しみやすい」「仕事が捗りそう」といったポジティブな反応が目立ちます。中国メーカーなどが先行する折りたたみスマホ市場ですが、マイクロソフトはスペック競争ではなく、あくまで「使い勝手」と「生産性の向上」という独自の土俵で勝負を挑む構えを見せています。
クラウド戦略の集大成としてのAndroid採用
なぜ自社OSを捨ててまでAndroidを選んだのでしょうか。その背景には、サティア・ナデラCEOが進めてきた「クラウド第一」の戦略があります。同社は現在、サブスクリプション型の「Office 365」などのサービス事業で過去最高益を更新するほどの快進撃を続けており、OSの枠組みを超えて自社サービスを普及させることに主眼を置いています。
Androidを採用すれば、世界中の開発者が作った膨大なアプリ資産をそのまま利用できるという大きなメリットがあります。ユーザーにとっての利便性を最優先に考えるこの決断は、かつてのOSの覇権にこだわっていた頃の閉鎖的なマイクロソフトとは一線を画すものです。まさに「実利」を取った、合理的かつ賢明な判断であると私は評価します。
2018年の世界出荷台数が前年比4.1%減となる14億490万台を記録するなど、スマホ市場全体は冷え込みを見せています。しかし、ナデラCEOの表情には余裕さえ漂っています。Appleのシェアを奪うことではなく、新しい働き方を提案することで独自の市場を切り拓こうとする彼らの挑戦が、停滞するガジェット界に刺激を与えることは間違いないでしょう。
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