東京版ブロードウェーはどこ?「劇場の街」を目指す首都の課題と未来への戦略

世界を代表する大都市には、必ずといっていいほど象徴的な「劇場街」が存在します。ニューヨークならブロードウェー、ロンドンならウエストエンド。そこは国内外の観光客が昼夜を問わず集まり、文化の熱狂が渦巻く場所です。一方、私たちの東京に目を向けてみると、日比谷や渋谷といった候補はあるものの、世界的なブランド力を持つ劇場街と呼ぶには、まだ道のりが遠いのが現状といえるでしょう。

2019年08月、そんな状況を打破する一手として、ブロードウェー発祥のチケットストア「tkts」が東京・渋谷に国内初上陸を果たしました。このサービスは、公演直前のチケットを割引価格で販売する「当日券専門」の仕組みです。「今夜、何か面白い舞台を見たい」という突発的なニーズに応えるための画期的な試みですが、オープンから約3カ月が経過した2019年12月03日現在、運営側からは意外な苦悩の声が漏れています。

運営会社であるロングランプランニングの榑松大剛社長は、東京とニューヨークの劇場分布の違いに驚きを隠せません。山手線の内側とマンハッタン島はほぼ同じ広さですが、劇場が一箇所に密集するニューヨークに対し、東京は各地に施設が点在しています。この「集積のなさ」が、観光客にとっての利便性を損なう要因となっています。当初掲げた1日2000枚という販売目標も、現状では達成が非常に厳しい見通しです。

SNS上では「当日ふらっと安く見られるのは嬉しい」と歓迎する声がある一方で、「見たい作品のチケットがそもそも出てこない」「劇場が遠くて移動が大変」といった不満も散見されます。これは興行主側が直前チケットの提供に消極的であることや、インバウンド(訪日外国人)向けのコンテンツ不足が影響しています。劇場の数自体は世界5位の149軒を誇る東京ですが、中身が追いついていないのが実情かもしれません。

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「箱」の増加と「才能」の不足というジレンマ

現在、経済産業省主導で「日本版ブロードウェー」の構想が進んでいますが、議論は難航しています。東急は「まずは渋谷をまとめたい」と主張し、東宝は「日比谷こそが本場」と譲りません。各社が自社の拠点を優先するため、エリアの一本化が進まないのです。そんな中、2019年11月には池袋に「ハレザ池袋」が誕生し、2020年には有明に劇団四季の新劇場が開業するなど、新しい「箱(劇場施設)」は次々と造られています。

しかし、関係者が危惧するのは、劇場というハード面ばかりが先行し、そこで演じる俳優や演出家といったソフト面の担い手が不足していることです。東宝の池田氏も、人材が足りないまま箱だけを増やしても「熱量のある舞台」は維持できないと警鐘を鳴らしています。ただ建物を建てるだけではなく、前衛的な作品を育てる小劇場の支援や、次世代の才能を育成する仕組みづくりこそが、東京が真の劇場都市へ脱皮する鍵となるでしょう。

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