映画館がないなら自分たちで呼べばいい!徳島で30年続く「大画面の感動」を守る情熱的なコミュニティの姿

映画館の椅子に深く腰掛け、照明が落ちる瞬間の高揚感は何物にも代えがたいものです。しかし、全国を見渡せば「見たい映画が地元の映画館で上映されない」という切実な悩みを抱える地域も少なくありません。徳島県もその一つですが、そこには自らの手で銀幕の魔法を呼び寄せ、30年もの長きにわたって活動を続けている熱い映画ファンたちが存在します。

その名も「徳島でみれない映画をみる会」という、ストレートな情熱が伝わる名前の組織です。彼らの活動が産声を上げたのは1988年のことでした。インターネットも普及していない時代、映画への渇望から始まったこの取り組みは、2019年12月3日現在もなお、徳島市のホールを舞台に月1回の上映会を継続しています。SNS上でも「これぞ真のシネフィル」「行動力が素晴らしい」と称賛の声が上がっています。

発足当時はわずか50人ほどだった会員数は、2008年の20周年時には約720名という大きな規模にまで成長しました。現在は約480名が在籍しており、その7割を女性が占めています。平均年齢は65歳前後と、映画黄金時代を肌で知る世代が中心となって、徳島の文化的な土壌を支えているのです。毎月の上映会には約300名ものファンが駆けつけ、暗闇の中で物語に没入しています。

スポンサーリンク

スマホ時代だからこそ輝く「映画館」という特別な体験

現在、徳島県内にある映画館はわずか3館に限られています。そのため、大都市圏で話題の作品が必ずしも上映されるわけではありません。そこで事務局長の福永二郎さんをはじめとする運営委員が、新聞の映画評や会員の声を頼りに、上映ラインナップから漏れた珠玉の作品を厳選しています。2019年11月には中国の青春群像劇「芳華 Youth」が上映され、多くの観客の心を打ちました。

2019年12月15日には、インドの格差社会に生きる女性を描いた感動作「あなたの名前を呼べたなら」の上映が予定されています。スマートフォンの小さな画面でいつでも映像を消費できる現代において、福永さんは「大画面と迫力ある音響、そして大勢で感動を共有することこそが映画の本来の姿である」と断言します。この信念こそが、利便性を超えた価値を人々に提供しているのでしょう。

この会の魅力は、単なる「鑑賞」に留まらないコミュニティの絆にあります。上映後には機関誌やホームページの掲示板で感想を語り合う「シネフィル(映画愛好家)」らしい活動が活発です。さらには花見やビアガーデンといった親睦会も開催されており、約25年通い続ける三木浩さんは、映画を通じた温かな人間関係が何よりの宝物だと笑顔で語ってくれました。

デジタル化が進むほど、私たちは「誰かとその場で体験を共有する」ことに飢えていくのかもしれません。自分たちの文化は自分たちで守り、育む。徳島でのこの息の長い挑戦は、地方における文化活動の理想的な在り方を示しているように感じます。利便性だけでは語れない、情熱が作り出す劇場の灯を、これからも絶やさずにいてほしいと願わずにはいられません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました