2019年12月02日、世界のエネルギー地図を塗り替える歴史的な瞬間が訪れました。ロシアの広大な大地から中国へと天然ガスを運ぶ、初のパイプライン「シベリアの力」がついに稼働を開始したのです。テレビ中継を通じて式典に参加したロシアのプーチン大統領は、両国の関係が「質的に新しい水準に引き上げられた」と自信をのぞかせました。
一方、中国の習近平国家主席も「戦略的協力の見本だ」と応じ、蜜月ぶりを世界にアピールしています。SNS上では「ついに中ロが完全に手を組んだ」「アメリカの覇権が揺らぐのではないか」といった、驚きと警戒の声が次々と上がっています。この巨大プロジェクトは、単なるビジネスの枠を超えた、対米包囲網の象徴といえるでしょう。
ここで「パイプライン」という言葉について少し解説しておきましょう。これは、石油や天然ガスといった資源を、地下や地上に敷設した長い管を使って輸送する装置のことです。一度建設すれば、船やトラックでの輸送に比べて、圧倒的に効率よく、かつ安定して資源を運び続けることができる魔法の杖のようなインフラなのです。
世界最大の「輸出×輸入」コンビが誕生
今回のプロジェクトを推進するのは、ロシアの政府系企業ガスプロムです。東シベリアのガス田から中国国境まで、全長約3200キロメートルにも及ぶ壮大なルートを建設しました。2019年12月02日時点ではその一部が稼働し、2024年以降の本格稼働時には、年間380億立方メートルという途方もない量のガスが中国へ流れ込みます。
これは中国の年間輸入量の約2割に相当する規模です。2018年に日本を抜いて世界最大の天然ガス輸入国となった中国にとって、隣国ロシアからの安定供給は喉から手が出るほど欲しいものでした。大気汚染の解消を目指し、汚れやすい石炭から、よりクリーンな天然ガスへ燃料を転換したい中国側の切実な事情が背景にあります。
契約規模も規格外です。2014年に交わされた30年間の供給契約は、総額約4000億ドル(約44兆円)に上るとされてきました。最新の情報では、さらに2割ほど安い価格で取引される見通しで、経済的なメリットも極めて大きいと言えます。まさに「ウィン・ウィン」の関係が、巨大なパイプを通じて物理的につなぎ合わされたのです。
米国の圧力に対抗する「国家資本主義」の結束
中ロがここまで急速に接近した最大の要因は、間違いなく「米国の存在」にあるでしょう。トランプ政権が「米国第一」を掲げ、中国との貿易戦争を長期化させるなか、習政権は資源の調達先を多角化する必要に迫られていました。かつては米国からの液化天然ガス(LNG)も有力な選択肢でしたが、摩擦の激化でその流入は急減しています。
ロシアもまた、ウクライナ問題に伴う米欧の経済制裁に苦しんでいます。欧州向けの輸出に不透明感が漂うなか、巨大な市場を持つ中国への接近は生き残りをかけた戦略です。中ロはエネルギーだけでなく軍事演習でも連携を深めており、自由民主主義を掲げる米国に対し、国家が主導する「国家資本主義」の結束を強めています。
編集者の視点から言わせていただければ、この連携は非常に危ういバランスの上に立っていると感じます。今は米国という共通の敵がいるために結束していますが、歴史的に国境問題を抱える両者がどこまで信頼し合えるかは不透明です。しかし、このパイプラインが世界のパワーバランスを大きく変える「導火線」になることは、疑いようのない事実でしょう。
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