世界のエネルギー市場が、ウィーンに熱い視線を注いでいます。2019年12月5日から6日にかけて開催されるOPEC総会および「OPECプラス」の閣僚級会合において、世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアが、現行の協調減産をさらに強化する方針を打ち出す見通しとなりました。
現在、産油国は日量約120万バレルの減産を実施していますが、今回の焦点は2020年3月末までとなっている期限の延長と、さらなる減産幅の拡大です。SNS上では「ガソリン代が上がるのでは?」という懸念の声がある一方で、投資家の間では原油相場の底打ちを期待する声が交錯しています。
サウジアラムコのIPO成功に向けた背水の陣
サウジアラビアがここまで減産にこだわる背景には、国営石油会社「サウジアラムコ」の新規株式公開(IPO)という歴史的イベントが控えているからです。2019年12月5日は、奇しくもアラムコの売り出し価格が決定する運命の日であり、原油価格の低迷は企業価値に直結してしまいます。
サウジの実質的なリーダーであるムハンマド皇太子にとって、今回のIPOは「脱・石油」を掲げる経済改革の軍資金を稼ぐための絶対条件と言えるでしょう。もし原油相場が崩れれば、改革の足取りが重くなるのは避けられません。まさに、自国の未来を賭けた大勝負に挑んでいるのです。
これに呼応するように、イラクのガドバン石油相も日量約40万バレルの追加減産について言及しました。市場では、供給過剰を食い止めるための「攻めの守り」として評価されていますが、思惑通りに事が運ぶかは不透明な情勢となっています。
立ちはだかるロシアと米シェールオイルの影
合意への最大の壁となっているのがロシアの存在です。2019年11月29日、ロシアのノワク・エネルギー相は減産期間の延長判断を先送りすべきとの慎重な姿勢を示しました。ロシア国内の石油企業は、価格維持のために自分たちが身を削れば、米国のシェールオイルに市場シェアを奪われると危惧しています。
「協調減産」とは、産油国が足並みを揃えて生産量を抑え、希少価値を高める戦略ですが、参加していない米国がその隙に増産を続けているのが現状です。米中貿易摩擦による景気減退の懸念もあり、北海ブレント原油先物は4月の高値から2割ほど低い1バレル61ドル付近で停滞しています。
筆者の見解としては、サウジはなりふり構わず合意を取り付けに来ると予想します。短期的なシェア損失よりも、アラムコの時価総額と国の威信を守る方が優先順位が高いからです。しかし、ロシアとの足並みが乱れれば、2020年前半には深刻な供給過剰に陥るリスクも孕んでいます。今後の展開から目が離せません。
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