2020年1月の投開票に向けて熱を帯びる台湾総統選において、政界のベテランが大きな決断を下しました。2019年11月13日、小政党である親民党のトップ、宋楚瑜氏が台北市内で記者会見を開き、自身5度目となる総統選への出馬を正式に表明したのです。現在77歳の宋氏は、長年台湾政治の中枢で活動してきた人物であり、その動向は選挙戦の構図を塗り替える可能性を秘めています。
今回の出馬において最も注目すべきポイントは、ハイテク大手・鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏との連携でしょう。2019年9月に出馬を断念していた郭氏ですが、今後は宋氏を全面的にバックアップする見通しです。経済界のカリスマである郭氏の支援は、宋氏にとって強力な追い風となるに違いありません。実業家としての実行力を求める層をどこまで取り込めるかが鍵となります。
中道層の受け皿を目指す戦略と「民主主義のDNA」
宋氏が掲げる戦略は、既存の二大政党に批判的な有権者、いわゆる「中道層」の獲得です。対中強硬姿勢を崩さない与党・民主進歩党の蔡英文総統と、親中的なスタンスを見せる最大野党・国民党の韓国瑜氏。この両極端な選択肢に戸惑う市民に対し、第3の道を示す狙いがあります。宋氏は会見で、民主主義は台湾人すべての「DNA」であると力説し、台湾の主体性を守り抜く覚悟を強調しました。
SNS上では、この「DNA」という言葉選びに感銘を受ける声がある一方で、宋氏の高齢や過去の出馬経験から「またか」という冷ややかな反応も見受けられます。しかし、二極化した政治に疲れを感じている若者世代からは、郭台銘氏との協力体制に期待を寄せる書き込みが急増中です。特定のイデオロギーに縛られない、実利を重視した新しい政治の形を、多くの国民が模索している様子が伺えます。
とはいえ、現実は決して甘いものではありません。直近の世論調査を紐解くと、宋氏の支持率は10%前後に留まっており、蔡英文氏や韓国瑜氏の後塵を拝しているのが現状です。トップを走る両候補との差は依然として大きく、郭氏の支援をどれほど具体的な得票に結びつけられるかが、今後の最大の焦点となるでしょう。2019年11月18日から22日にかけて行われる立候補登録に向け、さらなる合流劇があるのか目が離せません。
編集者としては、この第3勢力の台頭を歓迎したいと考えています。特定の政党が権力を握り続ける「二大政党制の弊害」は、時として国民の声を二分し、分断を招く恐れがあるからです。宋氏のような経験豊富な政治家が、経済界の巨頭である郭氏と手を組むことで、台湾の未来に多様な選択肢が生まれることは、民主主義の成熟度を示す素晴らしい試みではないでしょうか。
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