iPhone好調で鴻海(ホンハイ)が3四半期ぶり増益!「脱・下請け」へ向けた利益重視の歴史的転換と5Gへの布石

世界最大の電子機器受託製造サービス(EMS)として君臨する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に、復活の兆しが見えてきました。2019年11月13日に発表された2019年7月〜9月期の連結決算において、本業の儲けを示す営業利益が前年同期比で7%増加し、3四半期ぶりに増益へと転じたのです。ネット上では「さすがiPhoneの心臓部を支える企業だ」といった驚きや、今後の成長を期待する声が相次いでいます。

今回の好決算を牽引したのは、何といっても新型iPhoneの受託製造が堅調だったことです。受託製造(EMS)とは、自社ブランドを持たずに他社ブランドの製品を製造するビジネスモデルを指しますが、鴻海はこの分野で圧倒的なシェアを誇ります。これまでは「規模の拡大」を最優先してきましたが、現在は「利益率の向上」へと舵を切っており、その戦略が見事に数字として表れた形といえるでしょう。

劉揚偉(リュウ・ヤンウェイ)董事長は2019年11月13日の会見で、3〜5年以内に売上高粗利益率を10%に引き上げるという野心的な目標を掲げました。現在は6〜7%にとどまっており、この1%の改善が約1900億円もの利益上積みにつながる計算です。投資家に対して具体的な数値目標を示すのは同社にとって初の試みであり、市場からは「不採算事業の整理という痛みを伴う改革への覚悟を感じる」との評価が聞かれます。

スポンサーリンク

アップル頼みからの脱却と5G時代への挑戦

鴻海の構造改革は着実に進んでいます。Androidスマホの生産を担う子会社、富智康集団(FIHモバイル)が2019年7月〜9月期に黒字転換を果たしたほか、データセンター向けの通信機器といった高付加価値分野が成長しています。スマホ関連の売上比率が50%を切るなど、特定の製品に依存しないポートフォリオの構築が進んでおり、これは不安定な消費財市場におけるリスク回避策として極めて賢明な判断だと私は考えます。

さらに注目すべきは、次世代通信規格「5G」への先行投資です。鴻海は2019年11月13日、台湾の通信大手・亜太電信への出資比率を約40%に引き上げると発表しました。5Gは単なる通信速度の向上にとどまらず、あらゆる産業の基盤となる技術です。製造業の王者が自ら通信インフラに食い込む姿勢は、従来の「組み立て屋」から、通信と製造を融合させた「トータルソリューション企業」への進化を象徴しています。

一方で、米中貿易摩擦という大きな壁も立ちはだかります。鴻海は固定資産の約7割が中国に集中しているため、サプライチェーンの再編は急務です。劉氏はベトナムやメキシコ、台湾での増産を明言しており、地政学リスクへの対応力を高めています。また、一度は政界進出のために経営を退いた創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が、再び米中間の調整役に回るなど、組織の盤石さを取り戻そうとする動きも見逃せません。

創業者のカリスマ性と新リーダーの冷徹な数字管理が融合した今の鴻海は、まさに変革の真っ只中にあります。シャープ買収を経てブランドビジネスも手中に収めた彼らが、5Gや医療、ロボットといった新事業でどのような未来を描くのか。今回の増益は、単なる一時的な回復ではなく、巨大企業が次なるステージへと飛躍するための「助走」であると私は確信しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました