2019年11月27日、世界のIT景気の先行指標として注目される台湾主要企業の10月売上高が明らかになりました。集計された19社の合計売上高は1兆2719億台湾ドル(約4兆5千億円)となり、前年同月比で3.4%の減少を記録しています。この結果は2カ月ぶりの減収であり、長年IT業界を牽引してきたスマートフォン需要に変化の兆しが見え始めています。
今回の減収に大きな影響を与えたのが、iPhoneの受託生産を手掛けるペガトロン(和碩聯合科技)の苦戦です。同社の売上高は2割という大幅な減少となりました。この背景には、2018年は液晶モデルの「iPhone XR」の発売が遅れたことで10月に生産のピークが重なったのに対し、2019年は9月に全モデルが一斉発売されたというスケジュール上の要因も存在します。
SNS上では「iPhone 11の売れ行きは好調なはずなのに意外だ」といった驚きの声も上がっています。しかし、実際には昨年の高いハードルを「11」の好調さだけでは補いきれなかったのが現実のようです。特定の製品サイクルに業績が左右されるビジネスモデルの危うさが、如実に表れた形と言えるでしょう。編集部としては、一本足打法の限界が近づいていると感じざるを得ません。
「脱iPhone依存」が明暗を分ける企業競争力
その一方で、同じくiPhoneの組み立てを担う鴻海(ホンハイ)精密工業は、1%の増収を確保して底力を見せました。特筆すべきは、同社が売上高に占めるスマホなどの消費者向け比率を、1年前から5ポイントも低下させ49.2%にまで下げた点です。サーバーなどの企業向け需要へシフトすることで、特定の消費者トレンドに依存しない強固な収益構造への転換を急いでいます。
半導体受託生産で世界をリードするTSMC(台湾積体電路製造)も、4.4%増と5カ月連続の増収を達成しました。同社はiPhoneの心臓部であるCPU(中央演算処理装置)を製造していますが、現在は中国メーカーのスマホや産業機器向けなど、供給先を多角化しています。特定のクライアントに依存せず、プラットフォームとしての地位を確立したことが勝因でしょう。
ここで注目したい「EMS(電子機器受託製造サービス)」とは、ブランドメーカーから設計や製造を請け負う業態のことです。これまでは「iPhoneを作れば安泰」という時代でしたが、今後は鴻海のように医療やロボットといった高付加価値な新分野へいかにリソースを振り向けられるかが、企業の生き残りを決める重要なファクターになると確信しています。
市況の冷え込みと供給過剰に苦しむデバイス分野
明るい話題がある一方で、液晶パネルやメモリー分野には厳しい冬の時代が到来しています。液晶大手の友達光電(AUO)は24%減、群創光電(イノラックス)は11%減と、中国勢による増産攻勢の影響をまともに受けています。市場では「旧世代の工場が閉鎖されない限り、本格的な回復は望めない」という悲観的な見方が強く、過剰供給による価格下落が止まりません。
また、データ保存を担うDRAM大手の南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)も3割強の減収となりました。演算処理を行う半導体に比べ、記憶用メモリーは市況の回復が遅れており、単価の下落圧力が依然として強い状況です。米中貿易摩擦の影響で顧客が在庫を積み増していた「特需」も2019年9月までに一巡したと見られ、先行きには不透明感が漂っています。
これからのIT業界は、単なる「製造の請負」から脱却し、独自の技術や多角的な市場戦略を持つ企業だけが勝ち残る時代になるでしょう。2019年10月の数字は、まさにその過渡期を象徴する結果となりました。私たちは今、IT景気の大きな転換点を目撃しているのかもしれません。
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