2019年12月04日、ビジネス界では「持続可能な開発目標(SDGs)」への注目がかつてないほど高まっています。国連が2030年までの達成を掲げるこの目標に対し、企業は単なる貢献だけでなく、具体的な説明責任を果たすことが求められるようになりました。一見すると、社会貢献への戦略を評価する作業は煩雑に思えるかもしれません。しかし、これは人的資源の管理という視点から見れば、極めて重要な意味を持っているのです。
自社の事業がどのように世界の課題解決に寄与しているのか。これを社員が深く理解することは、自分たちの仕事が「世界に貢献している」という誇りへと直結します。こうした認識の変化は、働く意欲や会社に対する帰属意識を劇的に向上させる可能性を秘めているでしょう。とりわけ、日々の業務が社会と繋がっている実感を持ちにくい中小企業において、その心理的インパクトは計り知れないものがあります。
「システムイメージ」がビジネスの現場をアップデートする
SDGsの取り組みを通じて得られる最大の収穫は、社会が一つの大きなシステムであり、複雑な繋がりで成り立っているという視点を持つことです。この全体像を把握する力は「システムイメージの形成」と呼ばれます。昨今では、上司の指示を待たずとも組織が生命体のように自律的に機能する「ティール組織」が話題ですが、現代の多様な市場ニーズに応えるには、現場で自ら考え、柔軟に判断できる社員の存在が不可欠といえます。
自律的な判断を下すためには、目の前の業務だけでなく、社内の在庫状況や他部署との連携、さらには社外のNPOといったステークホルダーとの関わりまでを見通す力が必要です。ステークホルダーとは、顧客や株主だけでなく、その企業の活動に影響を受けるあらゆる利害関係者を指します。SDGsは、社員がこうした広い視野を獲得し、自身の行動が及ぼす先々の影響を想像するための格好の教材となるでしょう。
市民意識の差が企業文化に与える影響
日本においてSDGsが人材育成に必要とされる背景には、海外、特に欧州との社会構造の違いが挙げられるかもしれません。市民革命を経て市民社会が成立した欧州では、一人ひとりが社会の運営に責任を持つという意識が根付いています。そのため、不祥事を起こした企業を厳しく糾弾する一方で、社会貢献に熱心な企業を積極的に支持する文化が醸成されており、個人の行動が社会を変えるというイメージを持ちやすいのです。
対照的に、日本では公的な運営を他者に委ね、自分や身内の身近な生活にのみ関心が向きがちな傾向が見受けられます。社会問題に対しても、SNSで一時的に批判するだけで終わってしまい、価格が多少高くても環境に配慮した製品を選ぶといった、実動を伴う消費行動には繋がりにくいのが現状です。こうした「システムイメージ」が育ちにくい土壌だからこそ、企業が戦略的にSDGsを取り入れ、社会との接点を社員に意識させることには大きな価値があります。
SNSでも「SDGsはきれいごとだと思っていたが、組織論として聞くと納得できる」といった声が上がっています。もちろん、ただ掲げるだけでは意味がありません。自律的な社員を育てるためのツールとして、いかに効果的に運用するかが問われています。影山摩子弥教授が示唆するように、私たちが本当の意味で世界と繋がるためには、まず自分たちの仕事が描く大きな循環に目を向けることから始まるのではないでしょうか。
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