【なつぞら】モデル神田日勝の魂を継ぐ!2020年カレンダーで実現した50年越しの親子競演

北海道の広大な大地が生んだ孤高の画家、神田日勝氏をご存じでしょうか。ベニヤ板にペインティングナイフで絵具を厚く塗り重ねる独自の手法で知られ、32歳という若さでこの世を去った伝説的な芸術家です。2019年に放送されたNHK連続テレビ小説「なつぞら」において、ヒロインの初恋相手である山田天陽のモデルとなったことでも大きな注目を集めました。

そんな神田氏が果たせなかった50年前の約束が、2019年12月04日、愛娘の手によってついに結実しました。帯広信用金庫が発行する2020年用のカレンダーの挿絵を、長女である絵里子さんが担当することになったのです。父が急逝により断念せざるを得なかった連作が、半世紀の時を経て「バトン」として次世代へと受け継がれるドラマチックな展開に、地元からも感動の声が上がっています。

SNS上では「天陽くんのモデルの娘さんが描くなんて胸が熱くなる」「十勝の風景が親子二代で描かれるのは奇跡に近い」といった、作品の背景にあるストーリーに共感する投稿が相次いでいます。父・日勝氏が描く力強くダイナミックな質感に対し、絵里子さんは細筆を用いた繊細な表現を得意としており、同じ十勝の風景でもまた違った輝きを放っているのが印象的です。

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十勝の風土が育んだ「農民画家」の情熱と繊細な筆致

神田日勝氏は、日中は厳しい農作業に従事し、夜は自室で創作に打ち込む「農民画家」としての顔を持っていました。1969年から帯広信用金庫のカレンダー挿絵を手掛ける10年契約を結びましたが、残念ながら1970年に病で倒れ、わずか2年分を描いたところで筆を置くことになりました。絶筆となった「馬」という作品は、未完でありながら強烈な生命力を放つ名作として語り継がれています。

今回、絵里子さんが2020年のカレンダーのために選んだ題材は、鹿追町にある然別湖(しかりべつこ)の初夏の風景です。然別湖とは、大雪山国立公園の南端に位置する標高約800メートルの高地にある美しい湖を指します。彼女は父の記憶がほとんどない中で、その作品から溢れる力強さをリスペクトしつつ、自分自身の持ち味である「波の動きを再現する繊細さ」を一枚の絵に込めました。

筆者の私見を述べさせていただけるなら、このプロジェクトは単なる記念事業を超えた、芸術を通じた親子の対話だと感じます。教育を受けて受け継いだ技術ではなく、同じ十勝の風土で育ち、同じ景色を見つめることで自然と繋がった感性こそが、最も尊い継承ではないでしょうか。父の意志が50年の歳月を飛び越えて、娘の筆先から現代に蘇る光景には、言葉にできない美しさがあります。

帯広信用金庫では、この親子二代の物語が詰まったカレンダー4万部を配布しており、2019年12月04日現在、ホームページからも郵送依頼が可能です。十勝の雄大な自然と、そこに根を下ろした一族の情熱が、多くの人々の心に届くことを願って止みません。この一枚の絵が、激動の時代を駆け抜けた一人の画家と、その未来を守り続ける家族の架け橋となることでしょう。

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