合成ゴムの欠かせない原料である「ブタジエン」の価格が、アジア市場において急激な反発を見せています。2019年12月06日現在の取引価格は1トンあたり900ドル前後に達しており、先週の初めと比較するとわずか数日で8%も値上がりしました。これまでの軟調な相場から一転して強含みの展開となった背景には、海の向こう側で発生した予期せぬ事態が深く関わっているようです。
急騰の決定的な引き金となったのは、2019年11月27日にアメリカのテキサス州で発生した大規模な工場爆発事故でした。米化学大手のTPCグループが所有する主要プラントで発生したこの惨事は、世界の化学品流通に激震を走らせています。ブタジエンの生産が突如としてストップしたことにより、北米内にとどまらず、アジア圏への供給量も大幅に減少するという見方が市場関係者の間で一気に強まりました。
今回事故に見舞われた施設は、年間で約42万トンものブタジエンを生産する能力を持つ巨大拠点です。これはアメリカ国内における総生産量の2割を超える規模に相当するため、その影響力は計り知れません。そもそもブタジエンとは、タイヤやプラスチックの原料となる合成ゴムを作るために不可欠な基礎化学品です。日常で見かける自動車部品の多くに形を変えて使われている、産業の血液とも言える重要な物質なのです。
低迷していた市場を揺るがす供給網の不確実性
実はこの事故が起きる直前まで、ブタジエンの市場は供給過剰の状態にありました。アジア地域を中心に最新のプラントが次々と稼働を開始したことで、モノが余る「需給の緩和」が進んでいたからです。加えて、新興国での新車販売が振るわなかったことも重なり、2019年09月に記録した直近の高値からは3割以上も価格が下落していました。まさに底を這うような展開から、一気にステージが変わったと言えるでしょう。
SNS上では「原料高が続けば最終製品のタイヤ価格にも波及するのではないか」といった不安の声が上がっているほか、「一企業の事故がここまでグローバルな価格に直結する現代のサプライチェーンの危うさを感じる」といった鋭い指摘も散見されます。かつてないほど複雑に絡み合う国際市場において、特定地域の事故が瞬時に世界中の価格を押し上げる現実が、改めて浮き彫りになった形です。
私自身の見解としては、今回の価格上昇はあくまで供給面のアクシデントに起因する一時的なショックの側面が強いと考えています。しかし、主力プラントの復旧には相応の時間を要するはずであり、当面は高値圏での推移が続く可能性を否定できません。需要側が冷え込んでいる中でコストだけが跳ね上がる状況は、製造業にとって非常に厳しい局面ですが、今は供給網の多角化の重要性を再認識すべき時だと言えます。
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