日本の医療界に、これまでの常識を根本から変えようとする新たな風が吹いています。2019年11月18日現在、特に注目を集めているのが、2012年に設立された神戸市のスタートアップ「インテグラル・ジオメトリー・サイエンス(IGS)」です。同社は世界で初めて、スマートフォンなどの通信に使われる電磁波の一種である「マイクロ波」を活用し、乳がんを特定する革新的な技術を世に送り出しました。
この技術の凄さは、何といってもその精度と手軽さにあります。開発中の検診装置は、アンテナ部品を乳房に沿って動かすだけで、がん細胞の位置や形状をわずか数秒で解析可能です。驚くべきことに、従来の検査では見落とされがちだった1ミリメートル未満の微小ながんさえも、鮮明にモニターへ映し出すといいます。物理学の知見を医療に応用したこの挑戦は、多くの方に希望を与えるものとなるでしょう。
高濃度乳房の壁を突破する物理学の力
現在主流となっているX線を用いたマンモグラフィー検査には、実は大きな課題が存在します。それは、35歳から49歳のアジア人女性の約8割が該当する「高濃度乳房(デンスブレスト)」への対応です。これは乳腺組織が発達しているため、X線ではがんが見えにくい状態を指します。しかし、マイクロ波は脂肪やタンパク質を通り抜ける性質を持つため、乳房内の検査には最適なのです。
IGSの最高戦略責任者を務める木村建次郎氏は、神戸大学教授としての顔も持つ異色の物理学者です。「物理学で人命を救いたい」という熱い信念のもと、2019年11月18日時点で、すでに日本や欧米、中国など世界9カ国で基本特許を取得しています。SNS上では「痛くない検診が実現するかも」「早期発見の救世主になってほしい」といった期待の声が溢れており、その注目度の高さがうかがえます。
同社の企業価値は、旭化成や第一生命保険といった大手企業からの出資を受け、すでに112億円に達しています。今後は医療機関への営業力を持つ企業との提携が、事業拡大の鍵を握ることになるでしょう。物理学者の理論が、実社会の医療現場で結実する瞬間はすぐそこまで来ています。2021年秋の装置発売に向けた歩みは、日本のバイオ産業全体の勢いを象徴しているようです。
次世代バイオ企業が牽引する「1人当たり企業価値」の衝撃
今回の「NEXTユニコーン調査」では、バイオ・医薬品分野の企業の勢いが鮮明となりました。中でも、福岡県久留米市を拠点とする2010年設立の「ボナック」の存在感は圧倒的です。同社は、病気の原因となる遺伝子に直接アプローチする「核酸医薬品」の開発を手掛けています。これは遺伝情報の伝達役であるDNAやRNAの構成成分を利用した、次世代の医薬品として期待される分野です。
核酸医薬品の最大の利点は、従来のバイオ医薬品に比べて製造コストを抑えられる点にあります。一般的な医薬品と同様の化学合成で作ることができるため、より効率的な普及が見込めるのです。富士フイルムや住友化学といった名だたる企業が出資を決めている背景には、先天性や遺伝性の難病に対する治療の切り札になるとの強い期待があります。
編集部としては、これらの企業が単に技術力が高いだけでなく、「1人当たりの企業価値」において上位を占めている点に注目しています。少人数の精鋭チームが、世界を変えるような破壊的イノベーションを起こす姿は、まさに現代のビジネスモデルの理想形と言えるのではないでしょうか。日本のスタートアップが、世界規模の課題を解決する主役となる日は、もう遠い未来の話ではありません。
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