がん治療の最前線において、非常に重要な発見がもたらされました。東北大学の小玉哲也教授とスフバートル・アリウンブヤン特任助教らの研究チームは、がんが肺に転移する際、極めて早い段階で肺の細い動脈が詰まってしまう現象をマウスを用いた実験で突き止めたのです。この成果は、2019年11月19日までにイギリスの著名な科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」の電子版に掲載され、大きな注目を集めています。
研究チームが、解像度に優れた工業用のマイクロエックス線CT装置を駆使して肺の様子を詳しく観察したところ、驚くべき事実が判明しました。がんに侵された肺では、血管の長さや体積が通常の3分の1という驚異的なレベルまで減少していたのです。この数値の激減は、がん細胞が物理的に血管を塞いでしまうことが原因であると突き止められました。SNS上でも「これでは薬が届かないはずだ」と、驚きと納得の声が広がっています。
抗がん剤が届かない!?治療を阻む「血管の壁」という難題
2000年代に入るまでの主役だった低分子抗がん剤から、21世紀以降は特定の分子を狙い撃ちにする「分子標的薬」へと進化を遂げてきました。しかし、どのような優れた薬剤であっても、基本的には点滴などで投与された後に血流に乗って病変部へと運ばれます。つまり、がんによって血管が閉塞してしまうと、肝心の薬剤が目的地である「がんの患部」まで辿り着けなくなってしまうのです。これこそが、治療の効き目を悪くする大きな要因と考えられます。
今回の発見に対し、私は医療の常識を覆す非常に意義深いものだと感じています。今までは薬そのものの性能ばかりが重視されてきましたが、そもそも「現場に届くルート」が断たれているのであれば、戦略を根本から見直さなければなりません。特に大腸がんのように肺へ転移しやすいタイプのがんに対しては、この閉塞した血管の先まで確実に薬剤を送り届ける、高度な薬物伝送技術(ドラッグデリバリーシステム)の確立が急務と言えるでしょう。
専門用語として登場する「ドラッグデリバリーシステム」とは、体内の特定の部位へ必要な量の薬を、効率的かつ集中的に送り届ける技術を指します。今回の研究結果を受けて、この技術の重要性はこれまで以上に高まることは間違いありません。血管の詰まりを回避し、いかにしてがんの核心部へアプローチするか。東北大学によるこの画期的な知見が、将来の革新的な治療法開発に向けた力強い第一歩となることを、私たちは期待せずにはいられません。
コメント