2019年12月08日、日本のサッカー界に新たな歴史が刻まれました。J1リーグ最終節、横浜F・マリノスが苦難の道を乗り越え、見事にリーグ王者の座を勝ち取ったのです。シーズン序盤から優勝争いに加わりながらも、首位に浮上したのはわずか2節前のことでした。FC東京や鹿島アントラーズといった強豪を追走し、最後に見せた鮮やかなスプリント勝負は、まさに圧巻の一言に尽きます。
ポステコグルー監督が就任した昨季は12位と低迷し、理想と現実のギャップに苦しみました。監督が掲げる「アタッキング・フットボール」は、最終ラインを極端に高く設定し、後方から丁寧にパスをつなぐスタイルです。これは高いポゼッション(ボール保持率)を維持できる反面、相手にボールを奪われると一気にピンチを招く「ハイリスク・ハイリターン」な戦術であり、昨季は何度も逆襲の餌食となっていました。
しかし、ボランチの扇原貴宏選手が「このサッカーなら相手を圧倒できる」と信じていた通り、信念は2019年に大きな花を咲かせました。今季の総得点はリーグ最多の68得点を記録し、マルコス・ジュニオール選手と仲川輝人選手の爆発的な活躍がチームを牽引したのです。SNS上でも「これぞエンターテインメント!」「見ていてワクワクするサッカー」と、その攻撃的な姿勢を絶賛する声が溢れ返っています。
世界基準のスカウト網と柔軟な戦術進化
チームを支えたのは、選手たちの個の力だけではありません。世界的なサッカー組織「シティ・フットボール・グループ(CFG)」との提携から5年が経過し、そのスカウト網が真価を発揮しました。エジガル・ジュニオ選手の離脱や主力の海外移籍という危機に対しても、エリキ選手やマテウス選手といった「当たり」の助っ人を次々と補強。的確なフロントの動きが、得点力を維持する鍵となりました。
さらに特筆すべきは守備陣の進化です。畠中槙之輔選手やチアゴ・マルチンス選手といった対人に強いセンターバック、そして広範囲をカバーするGKの朴一圭選手が、攻撃的な布陣の裏に生じる広大なスペースを死守しました。夏場には監督から「危ない時は狙いを持って蹴り出せ」という柔軟な指示も飛び、理想主義に現実的な判断が加わったことが、ライバルを引き離す決定打となったのでしょう。
かつての名門、横浜F・マリノスは練習拠点の閉鎖や主力選手の退団など、存亡の機とも言える苦境を経験しました。しかし、守るべき過去をあえて手放したからこそ、恐れを知らずに攻め続ける「新しいマリノス像」を確立できたのだと感じます。泥臭く、それでいて華麗にゴールを奪うその姿は、逆境に立たされたすべての組織に勇気を与える、最高のファイトスタイルではないでしょうか。
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