山好きの皆様、そして自然を愛するすべての皆様に、素晴らしいニュースが飛び込んできました。2019年6月、甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)を中心とする一帯が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「エコパーク」に登録されることが決定しました。
急な岩場を這うように登り、倒木を乗り越え、美しいシャクナゲの花に癒やされる。そんな野趣あふれる甲武信ヶ岳周辺は、古くから多くの岳人を魅了してきました。今回の登録は、単に自然が美しいというだけでなく、その自然資源を活用した学びや文化の継承が高く評価された結果なのです。
首都圏を潤す「水」の故郷としての重要性
甲武信ヶ岳という名前の由来をご存じでしょうか。これは、かつての旧国名である甲州(山梨)、武州(埼玉)、信州(長野)の頭文字を取って名付けられたものです。1都3県にまたがるこの広大な山域は、まさに「水の聖地」とも呼べる場所でしょう。
ここには、首都圏の生活を支える荒川や多摩川、そして日本一の大河である信濃川や富士川の源流が存在しています。私たちが普段何気なく使っている水も、元をたどればこの山々に降り注いだ一滴から始まっているのです。ふもとの長野県川上村が高原野菜のレタス産地として有名なのも、この豊かな水と気候の恩恵と言えるでしょう。
「奥秩父」の魅力を伝えた先人・田部重治
この地域が「奥秩父」として広く親しまれるようになった背景には、ある偉人の功績があります。登山界のパイオニアである田部重治(たなべじゅうじ)です。英文学者として教壇に立つ傍ら、足繁くこの山域に通い、その渓谷美や木々の素晴らしさを流麗な文章で世に伝えました。
毎年6月の第3土曜日には、彼のレリーフがある場所で「田部祭」が執り行われており、2019年も6月15日に無事開催されたばかりです。まるで今回のエコパーク登録を、先人たちと共に前祝いしていたかのようです。
SNSでの反響と編集後記
ネット上でもこの吉報に歓喜の声が上がっています。「奥秩父の魅力が世界に認められて嬉しい」「水源の森としての価値が再認識されるべき」「田部重治の紀行文を読み返したくなった」といった、熱心な山岳ファンからの書き込みが多く見られます。
私は今回のエコパーク登録について、単なる観光地化ではなく「共生」のシンボルになると考えています。エコパークの理念は、自然保護と人間社会の共存です。都市の西方に広がるこの原生林が、私たちの暮らしといかに密接に関わっているか。この登録を機に、水の恵みと先人の想いに改めて感謝を捧げたいものです。
コメント