2019年6月22日現在、世界中の注目が英国ロンドンに集まっています。メイ首相の辞任に伴う与党・保守党の党首選は、ついにファイナリストの2名に絞られました。ボリス・ジョンソン前外相とジェレミー・ハント外相の一騎打ちです。これまでの議員投票で圧倒的な強さを見せたジョンソン氏と、現職の外相として実務能力をアピールするハント氏。次期首相の座を巡る争いは、英国の未来、ひいては欧州経済の行方を左右する極めて重要な局面を迎えています。
今回の争点の中心にあるのは、何と言っても「ブレグジット(EU離脱)」の進め方です。SNS上では「もう決められない政治にはうんざりだ」「強いリーダーが欲しい」といった声が溢れる一方で、「強引な離脱は生活を破壊する」という不安のつぶやきも散見されます。特にジョンソン氏が掲げる「合意なき離脱」も辞さないという強硬姿勢には、賛否両論が渦巻いており、国民の分断がいかに根深いかを物語っていると言えるでしょう。
「合意なき離脱」とは何か?そのリスクと各候補の主張
ここで、今回の最大の争点である「合意なき離脱」という専門用語について少し解説しましょう。これは、英国がEU(欧州連合)との間で、貿易や人の移動に関する新たな取り決め(協定)を結ばないまま、離脱期限を迎えてしまう事態を指します。もしこれが現実になれば、突然関税が発生したり、物流が滞ったりと、経済に大混乱が生じる恐れがあるのです。ジョンソン氏は、2019年10月31日の期限までに、例えこの「合意なし」の状態であっても離脱を断行すると主張しており、その覚悟が一部の党員から熱狂的な支持を受けています。
一方のハント氏は、「合意なき離脱」はあくまで最後の手段とし、基本的にはEUとの話し合いによる円満な解決を目指す立場です。彼は、メイ政権がまとめた協定案のうち、特にアイルランド国境問題に関する「安全策(バックストップ)」の修正を模索しています。この安全策とは、国境管理の厳格化を避けるために英国が一時的にEUの関税ルールに留まるという措置ですが、強硬離脱派からは「いつまでもEUの支配下に置かれる」と猛反発を受けていた経緯があります。
圧倒的優位のジョンソン氏と、逆転を狙うハント氏
現状の情勢を分析すると、ジョンソン氏の優位は揺るぎないものに見えます。2019年6月20日時点での保守党員向け世論調査では、ジョンソン氏の支持率が62%に達しており、11%にとどまるハント氏を大きく引き離しているのです。これは、メイ政権下での度重なる離脱延期に対し、党員たちが「何が何でも離脱を実現してくれる強いリーダー」を渇望していることの表れでしょう。ジョンソン氏は、EUへの約390億ポンド(約5兆3000億円)にも上る清算金の支払いを保留する可能性も示唆し、徹底抗戦の構えを見せています。
しかし、勝負はまだ終わっていません。決選投票は、英各地にいる約16万人の保守党員による郵便投票で行われ、結果は2019年7月22日の週に判明する予定です。ハント氏は自身を「アンダードッグ(勝ち目の薄い挑戦者)」と認めつつも、「政治にはサプライズがある」と逆転の機会を虎視眈々と狙っています。EU側も「再交渉はない」と強気の姿勢を崩していませんが、メルケル独首相やマクロン仏大統領との対話に一縷の望みをかけるハント氏の手腕にも注目が集まります。
編集者の視点:強硬路線は本当に国益になるのか
私自身の見解としては、ジョンソン氏の勢いがこのまま首相の座へ直結する可能性が高いと見ています。しかし、彼がちらつかせる「合意なき離脱」というカードは、諸刃の剣です。EU側を交渉のテーブルに着かせるためのブラフ(はったり)としては有効かもしれませんが、実際に発動されれば英国経済へのダメージは計り知れません。スチュワート国際開発相が「ジョンソン内閣には入らない」と断言したように、党内不和も懸念材料です。
果たして、強気のギャンブルに出るジョンソン氏か、それとも現実的な妥協点を探るハント氏か。英国、そして世界の経済マーケットは、固唾を呑んで2019年7月22日の週を待つことになるでしょう。私たちメディアとしても、単なる政局としてではなく、市民生活への影響という観点から、この党首選の行方を慎重に見守っていく必要があります。
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