日本から世界へ向けて放たれる航空貨物の動きに、いま大きな変化が訪れています。航空貨物運送協会の発表によれば、2019年10月の輸出量は前年を30%以上も下回り、11カ月連続でマイナスを記録するという厳しい局面を迎えているのです。SNS上でも「物流の冷え込みが景気後退の予兆ではないか」と懸念する声が上がっており、業界全体に緊張感が漂っています。
こうした状況下で、大手フォワーダーである阪急阪神エクスプレスの石塚完執行役員は、現在の物流シーンをどのように捉えているのでしょうか。フォワーダーとは、自らは輸送手段を持たず、航空会社からスペースを買い取って荷主の貨物を効率よく混載・輸送する「物流のコーディネーター」を指します。石塚氏の言葉からは、単なる数字以上の市場のリアルが見えてきました。
欧米・中国向け需要が軒並みスローダウン
石塚氏によれば、2019年11月の米国向け輸送量は前年同月比で約19%減少しました。その主な要因は、基幹産業である自動車関連の不振にあります。米国での新車販売が振るわないことで、関連する工作機械や工場の自動化を担うFA関連の設備出荷までもがドミノ倒しのように停滞しているのです。世界経済のエンジンとも言える自動車産業のブレーキは、物流現場に直撃しています。
また、かつて勢いのあった中国向けも、2019年11月には前年比35%減という大幅な落ち込みを見せました。これまではスピード重視の「航空輸送」が選ばれていましたが、荷動きが鈍化したことで、あえてコストの安い「海上輸送」に切り替える荷主が増えているようです。航空機を使うほどの緊急性が薄れているという事実は、現在の景況感を象徴していると言えるでしょう。
私は、この動きを単なる「景気後退」とだけ見るのは早計だと考えています。各企業がリスク管理の観点から「BCP(事業継続計画)」を見直し、在庫の持ち方や生産拠点を分散させ始めた結果、物流の「質」が変化している過渡期なのではないでしょうか。これからは輸送量だけでなく、変化に対応できる柔軟な物流網の構築が、企業の命運を分けることになりそうです。
2020年の運賃交渉と5Gへの期待
物流コストの指標となる「運賃」については、現在も低い水準で推移しています。石塚氏は、2020年度に向けた春の契約更改において、運賃の下落は避けられないとの厳しい見通しを示しました。医薬品のような高付加価値品は一定の価格を維持しているものの、物量の大部分を占める一般貨物の獲得競争は激化しており、フォワーダー各社は難しい舵取りを迫られています。
一方で、一筋の光も見え始めています。欧州向けでは次世代通信規格「5G」関連の貨物が動き出しており、中国でも景気刺激策によるインフラ投資の回復が期待されています。特に5Gは、あらゆる産業のプラットフォームを塗り替える可能性を秘めており、2020年以降の航空貨物市場を牽引する最大の「起爆剤」になることは間違いありません。
物流は経済の血流です。2019年12月13日現在、足元の数字は確かに厳しいものがありますが、ハイテク分野の進化や米中貿易交渉の進展次第で、再び力強く拍動し始めるはずです。私たちは目先の減少に一喜一憂せず、EV(電気自動車)の普及やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった、産業構造そのものの地殻変動を注視していく必要があるでしょう。
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