ビッグデータ時代の到来により、情報の取り扱いが企業の運命を左右する重要な局面を迎えています。日本経済新聞社が2019年12月14日に発表した「企業法務・弁護士調査」の結果からは、激変する法規制の中で、攻めと守りの両面で苦慮する企業の姿が浮き彫りとなりました。現在、日本政府は2020年の法案提出を視野に入れて個人情報保護法の見直しを加速させており、多くの法務担当者がその行方を注視しています。
今回の調査で、企業の53%にあたる108社が熱い視線を送っているのが「仮名情報」という新たな概念の導入です。これは通販サイトの購買履歴といったデータから、特定の個人を識別できないように加工を施した情報を指します。個人からのデータ開示請求を対象外とするなど、一定の条件のもとで規制を緩和するこの制度には、現場から「使いやすいルールを」と切実な期待が寄せられています。SNS上でも、利便性の向上に期待する声が上がっています。
しかし、企業の期待と実態の間には若干の温度差も存在しているようです。企業側はデータの自由な外部提供といった「流通の促進」を強く望んでいますが、弁護士などの専門家は、政府の方針がそこまで踏み込んだものにはならない可能性を指摘しています。2019年11月29日に公表された見直し骨子を見る限り、個人の同意なしにデータを他社へ流通させることは難しい情勢であり、企業は自社内での分析活用に軸足を置く必要がありそうです。
グローバル規制の波と「クッキー」利用への厳格な目
一方で、企業が最も警戒しているのは国際的なデータ移転に関する規制強化です。欧州のGDPR(一般データ保護規則)のような厳格なルールが日本でも意識されており、回答企業の66%が国境を越えたデータ持ち出しのリスクを懸念しています。特にITインフラを海外に依存する現代において、情報提供義務の強化は避けて通れません。ある機械大手からは、過大なコスト負担を危惧する切実な意見も届いており、経営への影響は無視できないでしょう。
さらに、多くのネットユーザーが関心を寄せる「クッキー(Cookie)」への規制も大きなトピックです。これはウェブサイトの閲覧履歴を保存する仕組みですが、特定の個人の分析に用いる場合には、本人の同意取得が義務付けられる方針です。これまで当たり前のように行われてきたマーケティング手法が、2020年を境に根本から見直しを迫られることになります。プライバシー保護と広告効果の両立は、今後さらに難易度の高い課題となるでしょう。
2020年1月には、米国で集団訴訟のリスクも孕んだ「カリフォルニア州消費者プライバシー法」の施行が目前に迫っています。私自身、現代のビジネスにおいて「プライバシーへの配慮」は単なるコンプライアンスではなく、ブランド価値そのものだと考えています。もはや事業のアイデアを練る段階から法務リスクを考慮する「プライバシー・バイ・デザイン」の考え方は、企業の生き残りに不可欠なリテラシーと言えるのではないでしょうか。
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