お馴染みの「お~いお茶」で知られる飲料業界の大手、伊藤園が2019年12月2日に発表した2019年5月〜10月期の連結決算は、まさに底力を感じさせる内容となりました。純利益は前年の同じ時期と比べて3%増え、89億円に到達しています。今期は記録的な長雨や台風といった自然災害の猛威にさらされましたが、それらを跳ね返しての最終増益達成は、市場でも驚きを持って受け止められているようです。
一方で、売上高については4%減の2654億円と、少し苦戦を強いられた形になっています。特に書き入れ時である2019年7月の天候不順が響き、主力の茶系飲料の販売が伸び悩みました。しかし、特筆すべきは本業の儲けを示す「営業利益」が7%増の141億円に伸びている点でしょう。これは、約1年前から粘り強く進めてきた「卸売価格」の引き上げ交渉が、実を結び始めた結果と言えます。
徹底した利益重視の姿勢と逆風を跳ね返す経営判断
「卸売価格の引き上げ」とは、小売店などに商品を卸す際の価格を上げることを指します。飲料業界は激しい価格競争にさらされがちですが、伊藤園は安売り合戦から一線を画し、商品の価値に見合った利益を確保する「粗利(あらり)の改善」に注力しました。SNS上でも「これだけ天気が悪かったのに利益を出すのは凄い」「値上げしても選ばれるブランド力がある」といった、企業の経営姿勢を評価する声が目立っています。
もちろん、順風満帆だったわけではありません。2019年10月に発生した台風19号では、各地の営業所が浸水被害に見舞われ、約1億円の特別損失を計上しています。特別損失とは、火災や災害など、企業の通常の経営活動とは無関係に発生した例外的な損失のことです。こうした予期せぬ不運に見舞われながらも、経営の屋台骨が揺らぐことはなく、着実に利益を積み上げる体制が整っていることが証明されました。
タリーズの動向と気になる消費増税の影響
子会社であるタリーズコーヒージャパンに目を向けると、売上高は4%増の176億円と好調を維持しているものの、営業利益は6%減の17億円となりました。また、2019年10月1日からの消費増税については、一時的に販売への影響があったと会社側は分析しています。ただ、持ち帰りと店内飲食で税率が変わる「軽減税率」による混乱や、利用客の行動パターンの大きな変化は見られないという点は、今後の安心材料になるでしょう。
伊藤園は、2020年4月期の通期業績予想において、売上高のみを4980億円へと下方修正しました。やはり前半戦の長雨によるダメージを考慮した慎重な判断ですが、利益目標は据え置いています。私個人の見解としては、単に規模を追うのではなく、卸価格の適正化によって「稼ぐ力」を強化した同社の戦略は、人口減少が進む国内市場において非常に賢明で、持続可能なモデルであると感じています。
コメント