高知県の南西端、美しい足摺岬を臨む土佐清水市で、一頭の馬の命を救い、街の未来を切り拓く心温まるプロジェクトが動き出しました。地元のNPO法人「あしずりダディー牧場命の会」が中心となり、殺処分の危機に瀕している牝馬「由美子」を観光馬車として起用する計画です。この試みは単なる観光支援に留まらず、行き場を失った馬たちの「セカンドキャリア」を創出する先進的なモデルとして、SNS上でも「命を繋ぐ尊い取り組み」と大きな注目を集めています。
主役となるのは、現在大月町の牧場で暮らす5歳の「由美子」です。彼女は「ブルトン種」という日本では非常に珍しい重種馬で、その体重は約1トンにも及びます。一般的なサラブレッドの約2倍という圧倒的な体格とパワーが特徴で、かつては農耕馬などで活躍した種類です。しかし、飼育していた牧場主の高齢化による閉鎖に伴い、最後の一頭となった彼女には厳しい現実が迫っていました。このままでは食用として処分される運命だったのです。
そこで手を挙げたのが、引退馬の安住の地を運営する宮崎栄美代表理事です。宮崎さんは、2020年春のデビューを目指し、由美子を観光馬車の引き馬として調教する計画を立てています。2020年7月にリニューアルを控える「足摺海洋館」や「足摺海底館」といった主要スポットを、地元の花であるツバキをあしらった華やかな「花馬車」で巡る光景は、土佐清水の新しい象徴になるでしょう。一度に10人ほどを乗せて歩く由美子の雄姿が今から待望されています。
ふるさと納税で繋ぐ命のバトンとJRAの支援
この壮大なプロジェクトを実現するためには、馬の購入費や訓練費、馬車の製作費などで少なくとも500万円の資金が必要です。宮崎さんは現在、土佐清水市のふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングの実施に向けて、市当局と緊密な協議を重ねています。期限が迫る由美子の命を救うため、行政側も早急な事業化の判断を迫られており、官民一体となったスピード感のある対応が期待されます。地域住民からも「由美子を助けて」という声が上がっています。
また、日本中央競馬会(JRA)もこの活動を後押ししています。華々しいレースの世界で活躍した名馬であっても、引退後に穏やかな余生を過ごせるケースは決して多くありません。JRAは、引退馬が余生を過ごす「養老牧場」への助成を行っており、ダディー牧場はその支援対象の一つです。2019年12月23日には、JRAの鈴木伸尋調教師が現地の視察に訪れる予定で、中央競馬界からもその運営体制や熱意に熱い視線が注がれています。
さらに、この事業は観光だけではありません。2020年中には馬ふんを活用したマッシュルームの生産・販売も計画されています。馬の排泄物を資源として再利用する「循環型農業」の確立です。専門用語で言えば、これは廃棄物を宝に変える持続可能な取り組みと言えるでしょう。私は、動物の命を守る活動が経済的な自立を伴うこのモデルこそ、現代の地方創生に必要な「三方よし」の形だと強く確信しています。
宮崎さんが馬の保護活動に身を投じたきっかけは、2010年9月に愛馬「ダディー」を突然死で失ったことでした。馬たちの過酷な現状を知り、2011年3月に設立されたこの牧場では、現在11頭の高齢馬が穏やかに暮らしています。由美子が土佐清水のマスコットとなり、いつかJRAの有名馬たちも集う「馬の聖地」となる日が楽しみでなりません。一頭の馬を救う優しさが、街全体を活性化させる大きな力へと変わろうとしています。
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