2019年11月14日、私たちは改めて「夜の震災」という恐怖に向き合う必要があります。多くの人が眠りにつく夜間は、とっさの判断力が鈍りやすく、停電が発生すれば避難ルートの確保さえ困難を極めるでしょう。国も夜間の被害拡大を予測しており、今まさに暗闇での訓練が注目を集めています。
東京・豊島の池袋防災館では、2018年4月から全国初となる「防災体験ナイトツアー」を毎週金曜の夕方に開催しています。照明を落とした静寂の中で突如として襲いかかる震度6の激震は、布団に横たわる参加者たちに「昼間とは全く違う」という現実を突きつけているようです。
実際に体験した男子高校生は、想像を絶する揺れに驚きを隠せません。寝ぼけている状態では身を守る動作が遅れることを痛感し、家具の配置見直しや避難経路の確保が不可欠だと語っています。SNS上でも「夜の地震はパニックになりそう」「枕元の備えを再確認した」といった切実な声が広がっています。
阪神大震災の教訓から学ぶ枕元の安全対策
案内役を務める東京消防庁OBの土屋芳朗さんは、1995年1月17日の阪神大震災を例に挙げ、倒壊した家具による生き埋めの危険性を指摘されています。寝室に倒れてくる物がないか今夜すぐに確認することに加え、懐中電灯や厚底のスリッパを枕元に用意することが、命を守る第一歩となるでしょう。
自治体の動きも活発化しています。2019年5月には、徳島県阿波市で約400人の住民が参加する初の夜間訓練が実施されました。午後7時30分の放送を合図に、参加者は反射材や懐中電灯を手に、暗闇の中で互いに声を掛け合いながら避難ルートを確認し、投光器の設営など実戦的な演習に取り組んでいます。
東京都目黒区では2019年7月、住民主体の「避難所運営協議会」が中心となり、夜間の炊き出しや簡易トイレの設置訓練が行われました。行政主導から住民主体へと訓練の質が進化しており、地域全体で24時間いつ起きるかわからない災害への即応力を高めようとする姿勢が伺えます。
「正常性バイアス」を打破する訓練の重要性
専門家が警鐘を鳴らすのは「正常性バイアス」という心理現象です。これは自分にとって都合の悪い情報を無視し、「自分だけは大丈夫」と思い込んでしまう心の動きを指します。暗闇では状況把握が遅れるため、この心理が働きやすく、避難の遅れに直結する危険性が極めて高いのです。
夜の暗闇は、物理的な不自由さだけでなく、人間の心理的な切迫感をも奪い去る恐ろしい側面を持っています。だからこそ、暗い中での訓練を繰り返すことで、このバイアスを打破し、リアリティを持った備えを構築していくことが、私たち一人ひとりに求められているのではないでしょうか。
編集者として私は、防災を「知識」で終わらせず「体験」することの重要性を強く感じます。夜の訓練で感じる緊張感こそが、いざという時の生存率を左右するはずです。まずは今夜、枕元に灯りと靴を置くことから始めてみませんか。その小さな一歩が、未来のあなたを救うかもしれません。
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