2019年3月1日の夜、東京都中央区のカラオケ店で、未来を夢見る大学生の希望を打ち砕く卑劣な事件が発生しました。大手商社に勤務していた当時25歳の男が、OB訪問のために上京していた20代の女子学生に対し、酒の一気飲みを強要した上でわいせつな行為に及んだのです。さらに男は、彼女の宿泊先のカードキーを無断で持ち出し、部屋に侵入して暴行を働きました。このあまりにも悪質な「立場を利用した犯行」に対し、東京地裁は2019年10月に懲役3年(執行猶予5年)の判決を下しています。
この事件は、氷山の一角に過ぎません。連合が2019年5月に実施した調査によれば、20代女性の約12%が就活中にセクハラ被害を経験したと回答しています。就職活動において、企業側と学生側の間には、情報の非対称性や「採用されたい」という心理的な上下関係が明確に存在します。いわゆる「就活セクハラ」は、こうした学生の脆弱な立場を悪用する極めて卑怯な行為であり、現代社会が解決を急ぐべき深刻な病理であると言わざるを得ないでしょう。
複雑化する採用ルートとマッチングサービスの光と影
なぜ、OB訪問での被害がこれほどまでに深刻化しているのでしょうか。その背景には、近年の新卒採用ルールの形骸化と複雑化があります。2020年新卒採用の動向を見ると、選考解禁とされる2019年6月時点で、すでに4年生の7割以上が内定を得ていました。インターンシップなどの非公式ルートでの早期選考が一般化した結果、学生側は少しでも有利な情報を得ようと、人事担当者以外の社員と接触できるOB訪問に過度な期待を寄せるようになっています。
こうした需要に応える形で、OB訪問のマッチングサービスも急速に普及しました。2020年卒の学生の36%が利用するなど、便利なインフラとして定着しつつあります。しかし、こうしたサービスは企業や大学の監視の目が届かない「密室」を生み出しやすいという側面も併せ持っています。一対一で会うという性質上、悪意を持った社員が自らの優位性を誇示し、不適切な行動に及ぶリスクを孕んでいる事実は、決して無視できるものではありません。
大学側も苦慮しており、青山学院大学のように居酒屋や自宅といった閉鎖的な空間での面会を禁じるよう、学生に強い注意を呼びかけています。しかし、ある大学担当者が「OB訪問自体を止めることはできない」と漏らすように、学生の自衛には限界があるのが実情です。現状、厚生労働省の指針案でも、就活生は企業のハラスメント防止義務の直接的な対象外であり、企業側の「努力義務」に留まっている点は、制度上の大きな欠陥と言えるでしょう。
私個人の意見として、企業はこの問題を単なる「個人の逸脱」で済ませるべきではありません。ハナマルキャリア総合研究所の上田代表が指摘するように、対策の遅れは学生の命運を左右します。また、兼定弁護士が語る通り、一度でも不祥事が起きれば、優秀な人材がその企業を避けるのは当然の流れです。企業は、学生を「お客様」あるいは「未来の同僚」として尊重する意識を徹底し、OB訪問を会社の管理下で行うなどの抜本的な改革を断行すべきです。
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