旅行や出張の楽しみといえば、車窓を眺めながら楽しむお弁当や冷たい飲み物ですよね。近年、多くの新幹線で車内販売が姿を消すなか、JR東海は2020年3月のダイヤ改正以降も東海道新幹線でのサービスを継続することを決定しました。
現在、JR東日本やJR西日本といった各社では、駅ナカ施設の充実や人手不足を背景にサービスの縮小が進んでいます。しかし、東海道新幹線の「のぞみ」や「ひかり」では、今もなおパーサーがワゴンを押して歩くおなじみの光景が守られているのです。
ネット上では「車内販売がなくなると寂しい」「あのカチカチのアイスが食べられなくなるのは困る」といった継続を喜ぶ声が相次いでいます。利便性だけでなく、新幹線という空間そのものに情緒を求めるファンにとって、この決断は非常にポジティブに受け止められているようです。
「タイトなスケジュール」を支えるビジネス需要の裏側
JR東海の子会社で車内販売を担うジェイアール東海パッセンジャーズの中村明彦社長は、「販売業務単体では収益を上げるのは難しい」と率直に語ります。それにもかかわらず継続を選ぶ最大の理由は、東海道新幹線特有の圧倒的な「ビジネス需要」にあります。
1日あたり約47万人もの利用者が行き交うこの路線では、分刻みのスケジュールで動くビジネスパーソンが少なくありません。発車直前にホームへ駆け込む彼らにとって、乗車後に温かいコーヒーやお弁当を購入できる車内販売は、なくてはならないインフラなのです。
編集者の視点から見ても、駅での買い出し時間を惜しんで仕事に打ち込む人々にとって、座席まで商品を届けてくれるサービスは究極の「時短ツール」といえるでしょう。この顧客ニーズを正確に捉えている点に、JR東海の揺るぎない戦略を感じます。
「パーサー」は単なる販売員ではない?安全を守るプロの役割
もう一つの重要な理由は、乗客の安全確保です。車内販売を行うスタッフは「パーサー」と呼ばれますが、これは単なる販売員を指す言葉ではありません。彼らは接客のプロであると同時に、車掌の業務を一部補佐する専門職としての顔も持っています。
専門用語としての「パーサー」は、もともと客船や航空機の事務長を指しますが、新幹線においては緊急時の誘導や急病人の対応にあたる「安全要員」としての重責を担っています。走行中のトラブルに備え、常に一定数のスタッフが車内にいることは大きな安心感に繋がります。
販売収益だけを見れば厳しい状況かもしれませんが、安全という付加価値を考慮すれば、その存在意義は計り知れません。もしもの時に頼れるスタッフが近くにいるという事実は、高速鉄道としての信頼性を支える目に見えないバックボーンとなっているはずです。
こだわりの駅弁で採算改善へ!社長自らが挑む改革
2019年7月に就任した中村社長は、自ら毎日2種類の弁当を食べ比べるなど、商品力の強化に並々ならぬ情熱を注いでいます。不採算部門を支えるため、売上の7割を占める駅構内店舗での収益力を高めつつ、仕入れコストの最適化にも目を光らせている状況です。
こうした企業努力によって、私たちはこれからも新幹線の旅を彩る食の体験を楽しむことができるでしょう。効率化が叫ばれる時代だからこそ、利便性と安全を両立させた「車内販売」という文化が長く続いていくことを切に願っています。
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