アジアのインフラを支える重要素材、塩化ビニール樹脂の輸出市場に明るい兆しが見えてきました。2019年12月24日、日本の塩ビ大手が発表した2020年1月積みの輸出価格は、実に4カ月ぶりの上昇へと転じています。具体的には、インド向けが1トンあたり920ドルから930ドルと、前月比で10ドルから20ドルも値を上げました。
中国向けについても、前月より20ドル高い850ドルで決着しており、アジア全体で取引価格が強含んでいます。SNS上では「景気回復のサインか」「建設ラッシュが続くアジアの勢いを感じる」といった、市場の活気に対するポジティブな反応が目立ち始めています。世界経済の動向を占う上でも、この価格上昇は無視できないトピックと言えるでしょう。
中国の電力コストと生産調整がもたらす需給の変化
今回の価格上昇の背景には、中国国内での供給体制の変化が大きく関わっています。冬季に入り電力コストが高騰したことで、塩水を電気分解して原料を作る装置の稼働率が低下しました。この工程で生まれる「塩素」は塩ビ製造に不可欠ですが、その供給が減ったために、中国国内の取引価格が跳ね上がっているのです。
専門用語で「電解(でんかい)」と呼ばれるこのプロセスは、電気の力で化学物質を分解する手法で、製造原価における電気代の割合が非常に高いのが特徴です。エネルギー価格の変動が、巡り巡ってアジア全体の建設資材の値段を押し上げる結果となりました。この動きに呼応するように、先行指標となる台湾大手の価格も上昇に転じています。
インドの建設シーズンとプラント修理が需要を加速
世界最大の塩ビ輸入国であるインドでは、これから春にかけて建設需要がピークを迎えます。2020年の年明け以降は、雨季である「モンスーン」が到来する前に資材を確保しようとする動きが活発化する時期です。さらに2020年3月から5月にかけては、アジア各地の主要プラントで定期修理が重なるため、供給不足を懸念した買い注文が殺到しています。
編集部としては、今回の価格上昇を単なる一時的な現象ではなく、新興国の底堅い成長の証左であると捉えています。電力不足という製造側の制約がある一方で、建設需要という実需がしっかりと下支えしている点は注目に値します。資源高が懸念される側面もありますが、この活況が2020年のアジア経済を牽引するエンジンになることを期待せずにはいられません。
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