2019年12月29日、世界の新興国為替市場では明暗がくっきりと分かれる一年となりました。投資家たちのマネーが、国の「基礎体力」を厳しくチェックして投資先を絞り込む「選別」の動きを強めているためです。特に注目すべきは、年間で7%もの上昇を見せたタイバーツと、逆に37%という記録的な暴落を喫したアルゼンチンペソの対照的な姿でしょう。
インターネット上やSNSでも「新興国ならどこでも利益が出る時代は終わった」「貯金箱のように安定した国と、穴の開いたバケツのような国の差が激しい」といった声が目立ちます。2019年8月には米中貿易摩擦の激化により、新興国全体から資金が流出する場面もありましたが、その後の回復局面で見えてきたのは、通貨ごとの極端な「格差」だったのです。
「外貨準備」が分ける通貨の防衛力
投資家が最も重視している指標の一つが「外貨準備」です。これは政府や中央銀行が他国との支払いや通貨安定のために保有するドルなどの資産を指します。いわば国の「貯金」ですね。国際通貨基金(IMF)は、短期的な借金の返済能力などから導き出す「適正な外貨準備高」の基準を設けていますが、2019年のデータでは各国の脆弱性が浮き彫りになりました。
暴落したアルゼンチンは、この適正水準の69%にまで落ち込んでいます。かつては100%近かったのですが、通貨価値を守るために貯金を使い果たし、それがさらなる不安を呼ぶ悪循環に陥っています。対照的に、7%上昇したタイは基準の217%、ロシアは317%と、圧倒的な「防衛力」を誇っています。この安心感こそが、投資マネーを惹きつける最大の要因と言えるでしょう。
SNSでは、アルゼンチンの現状に対し「デフォルト(債務不履行)の影がちらつく中で買うのはギャンブルすぎる」という厳しい意見が相次いでいます。デフォルトとは、国が借金の利息や元本を約束通りに返せなくなる状態を指しますが、政権交代による政策変更への不信感が、この危機的状況に拍車をかけているのが2019年現在の実情です。
忍び寄る「過去50年で最大級」の債務リスク
世界銀行は2019年12月、新興国の債務残高が約6000兆円(55兆ドル)に達したと警鐘を鳴らしました。これは過去50年で最も深刻な規模とスピードであり、世界経済の火種になりかねません。米連邦準備理事会(FRB)が利下げを休止した今、これまでジャブジャブに溢れていた資金の流れが止まり、中身のない国から一気にマネーが引き揚げるリスクが高まっています。
私は、この「選別」の動きは健全な市場の浄化作用である一方、非常に残酷な結果をもたらすと考えています。かつてのアジア通貨危機を乗り越えて「安全通貨」の地位を築いたタイのような成功例がある一方で、政治混乱やデモが続く南米諸国は、構造的な改革なしには浮上できません。2020年に向けて「次のアルゼンチン」を探す投資家の視線は、これまで以上に冷徹になるはずです。
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