1982年の開校以来、日本における米国高等教育の先駆けとして歩んできたテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)が、大きな節目を迎えました。2019年12月16日、TUJは東京・世田谷区の昭和女子大学敷地内へと校舎を移転し、日米のキャンパスが融合する新たな学びの形をスタートさせています。
今回の移転に際して来日した、米国本校のリチャード・イングラート総長とミッチェル・モーガン理事長は、TUJが30年以上も継続できた理由を「長期的な信頼関係」と語ります。多くの米国大学が日本から撤退する中で、彼らは一貫して「米国流の教育」を英語で提供し続け、日本政府からの制度的支援も勝ち取ってきたのです。
SNS上では「世田谷にアメリカが出現した」「昭和女子大とのコラボは面白い試み」といった驚きと期待の声が広がっています。多様な国籍の学生が机を並べるこのキャンパスは、まさに日本にいながら体験できる「異文化交流の最前線」といえるでしょう。
議論が教室を熱くする!「クリティカルシンキング」の真髄
米国流教育の核となるのは、教師と学生が意見を戦わせる「双方向型教育」です。これには「クリティカルシンキング(批判的思考)」、つまり情報を鵜呑みにせず「なぜそうなるのか」と多角的に分析し、論理的に最適解を導き出す能力が欠かせません。
イングラート総長によれば、米国の大学では学生が教師に異論を唱えることさえ推奨されるそうです。これは単なる反抗ではなく、事前の予習で基本を身につけた上で、議論を通じて互いに学び合う「最善の授業」の形なのです。日本では教員を敬う文化が議論を抑制しがちですが、TUJはその壁を壊そうとしています。
実は米国でも、かつては講義を聴くだけのスタイルが主流でした。しかし、教育学の研究と長年の積み重ねにより、学生全員を議論に引き込む「戦略的質問」などの技法が確立されました。こうした努力が、次世代に求められるグローバルなコミュニケーション能力を育む土壌となっているのです。
高騰する学費問題と「教育は国家への投資」という信念
一方で、米国の高等教育が直面する「学費高騰」という厳しい現実についても率直に語られました。かつては予算の約70%を占めていた州政府からの拠出金は、2019年時点で10%台まで減少しています。この不足分を補いつつ、いかに学生の負担を減らすかが大きな課題です。
テンプル大学は2019年、州内学生の授業料値上げ見送りという英断を下しました。これは、経済的に恵まれない学生にも教育の機会を確保するためです。大学側は民間の寄付集めや経費削減に奔走しており、トップ自らが資金調達の「顔」として世界中を飛び回っているのが現状です。
「教育への支出は政府による贈与ではなく、国家の将来に対する投資である」という総長の言葉には、強い覚悟が滲みます。教育が生産性の高い市民を育て、経済発展の原動力になるという信念があるからこそ、彼らはしたたかに、そして情熱的に大学運営を続けているのです。
私個人としては、トップ自らが「奨学金のために寄付を!」と冗談を交えつつも真剣に説く姿勢に、米国大学の圧倒的な力強さを感じました。日本の教育現場も、こうした「自ら資金と学生を惹きつけるバイタリティ」から学ぶべき点は多いのではないでしょうか。
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