インターネットの世界でCGキャラクターが縦横無尽に動き回り、動画を配信する「バーチャルユーチューバー(VTuber)」たちが、今まさにその活動の領域を爆発的に広げています。かつては画面の中だけの存在だった彼女たちが、仮想空間を飛び出し、現実世界でファンと「直接会える」サービスが次々と誕生しているのです。この熱狂を支えているのは、勢いのある多くのスタートアップ企業たち。今回は、2019年12月24日現在の熱気あふれる現場から、その舞台裏に迫ります。
12月上旬の日曜日の午後、東京・渋谷のプラネタリウムは、ファンが振る緑色のサイリウムで埋め尽くされていました。ドームスクリーンに映し出されたのは、人気VTuberの堰代(せきしろ)ミコさん。彼女が朗読や歌を披露するイベント「夜色の目 for Mico-Responsive-」が開催され、会場は熱狂の渦に包まれました。普段はスマホやPCの小さな画面にいる推しが、目の前の大画面で躍動する姿に、訪れた20代男性は「あんなに近くに感じられるなんて」と興奮を隠せない様子でした。
急成長する「表舞台」の事務所ビジネス
このイベントを手掛けたのは、スタートアップのバルス株式会社です。彼らは映画館や水族館をハブにして、現実世界とバーチャルが交差する体験を提供しています。VTuberとは本来、声優の「声」と「動き」を、モーションキャプチャー(体の動きをデジタル化する技術)によってCGと連動させる仕組みから始まりました。現在ではその影響力に企業も注目。実在のアイドルと同様に、マネジメントを専門とする「事務所」機能を持つスタートアップが続々と台頭しています。
その筆頭格が、登録者数260万人超を誇る「キズナアイ」を支援するActiv8株式会社です。彼らは動画配信のみならず、楽曲制作や企業とのタイアップ広告まで幅広く手がけています。キズナアイは、今年の東京モーターショーでナビゲーターを務め、日清食品のCMにも出演。SNS上では「もはや完全に国民的アイドル」といった声も上がっており、従業員100人規模の組織へと成長した同社の勢いは、この業界の可能性を象徴しているといえるでしょう。
現在、国内のVTuber数は、2D(平面的なイラストベース)のモデルを含めると9,000人を超えるとされています。ある関係者によれば「トップ層の年収は数億円に達する可能性がある」とのことで、その経済圏は計り知れません。現時点での市場規模は50億から100億円程度ですが、数年内にはアニメソング市場に匹敵する500億円規模にまで膨らむという見方もあります。投資家からの注目も熱く、主要企業の資金調達額は2019年末までに100億円を突破しました。
5G時代の到来が「舞台裏」の技術を加速させる
こうした華やかな「表舞台」を支えるのが、高度な技術を提供する「舞台裏」の企業たちです。11月中旬、渋谷のビットスター本社では、ファンがVTuberと1対1で会話できる体験イベントが開催されました。VR(仮想現実)ヘッドセットを装着すると、目の前に美少女VTuberが現れ、動きに合わせて距離が縮まるドキドキの体験が提供されています。客単価はグッズ購入を含め1万から2万円に達することもあり、ファンの熱量の高さが収益を支えています。
この仕組みを支えるのが、演者の動きをリアルタイムでCGに反映させるモーションスーツと、高速なデータ通信技術です。今は専用のスタジオが必要ですが、2020年から本格普及が期待される「5G(第5世代移動通信システム)」が追い風となり、全国どこからでも高画質なリアルタイム出演が可能になるでしょう。個人的には、VTuberは日本が世界に誇る「次世代のアニメ文化」として、アニメに次ぐ巨大輸出コンテンツに化けると確信しています。
かつて、アニメキャラクターは一方的に「見る」対象でしかありませんでした。しかしVTuberの登場により、ファンはキャラクターと「会話する」という夢を叶えつつあります。この新しい文化を維持するためには、クリエイティブな演者と、それを支える技術者、そして投資家たちが手を取り合い、持続可能なエコシステムを構築していくことが不可欠です。日本発のバーチャルアイドルが世界を席巻する日は、すぐそこまで来ているのかもしれません。
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