私たちの日常に欠かせないスマートフォンの画面を彩る有機ELディスプレイ。その常識を根底から覆すような画期的なニュースが、2019年12月20日に茨城大学から発表されました。吾郷友宏准教授らの研究グループが、九州大学や京都大学との共同研究により、高価な貴金属を一切使用せずに、鮮やかな青色の光を放つ新しい有機EL材料の開発に成功したのです。
そもそも有機ELとは「オーガニック・エレクトロ・ルミネッセンス」の略称で、特定の有機化合物に電圧をかけることで、物質そのものが自ら光り輝く現象や素子を指します。バックライトを必要としないため、液晶画面に比べて圧倒的に美しい黒を表現できるのが最大の特徴ですが、一方で光の三原色の一つである「青色」の発光効率が低いという課題を長年抱えてきました。
現在実用化されている多くの有機EL材料には、発光を助けるためにイリジウムや白金といった希少な貴金属が組み込まれています。しかし、これらは産出量が限られるため、ディスプレイ製造コストを押し上げる大きな要因となっていました。SNS上では「スマホが高くなるのは素材のせいだったのか」「安くて綺麗な画面が普及してほしい」といった、低価格化を望む声が多く寄せられています。
革新的な「はしご状分子」がもたらす驚異の発光スピード
今回の研究が画期的なのは、炭素や水素といった地球上に豊富に存在する元素をベースに、ホウ素や酸素を巧みに組み合わせた「はしご状」の有機分子を設計した点にあります。この特殊な構造によって、電気を流した際に分子内に蓄積されるエネルギーを、瞬時に光へと変換することが可能になりました。これにより、従来の貴金属を用いた材料に引けを取らないほどの強い発光効率を実現したのです。
専門的な視点から見ると、これは電気エネルギーを光へと変換するまでの「速度」を劇的に向上させた成果といえるでしょう。エネルギーが熱として逃げる前に効率よく光に変える技術は、単に美しいだけでなく、デバイスの省電力化や長寿命化にも直結します。次世代のディスプレイや照明器具の在り方を、この小さな分子が大きく変えてしまうかもしれません。
私個人の意見としては、この技術は日本の素材開発能力の高さを改めて世界に知らしめるものだと感じています。資源の少ない日本において、ありふれた元素から付加価値を生み出す研究は、産業競争力を高める鍵となるはずです。今後は青色の純度をさらに高める改良が進められる予定ですが、早期の実用化によって、私たちがより手軽に高画質なデバイスを楽しめる日が来ることを期待せずにはいられません。
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