従来の大型商業施設が苦戦を強いられる中、郊外のアウトレットモールが驚異的な快進撃を見せています。業界を牽引する三井不動産と三菱地所系の2大巨頭は、ともに過去最高の売上高を記録しました。ネット通販で手軽に服が買える時代に、なぜ私たちはわざわざ時間とガソリン代をかけてまで、遠方のアウトレットへ足を運ぶのでしょうか。その背景には、単なる安売りだけにとどまらない、現代人のライフスタイルに合わせた劇的な変化が隠されているのです。
SNS上でも「アウトレットに行くと1日中歩き回ってクタクタになるけど、なぜか最高にリフレッシュできる」「実物を見て宝探しをする感覚は、スマホの画面上では絶対に味わえない」といった声が多数寄せられています。タイムパフォーマンを重視する現代人にとって、休日に家族や友人と過ごす時間は非常に貴重なものです。一見すると非効率に思える「遠出の買い物」こそが、日常のストレスを解消する特別なエンターテインメントとして機能しているのでしょう。
ダイソンやベンツも参入!進化するテナント戦略と驚きの購入数
三井不動産が全国に展開する「三井アウトレットパーク」の2018年度売上高は3289億円に達し、前年度比で2%の増加を記録しました。2019年度の上半期についても、主要な7施設で過去最高の数字を叩き出しています。同社のアウトレット部長を務める坂ノ下忍氏は、誕生から20年以上が経過して新鮮味が薄れてきたからこそ、ここ2年ほどで大胆な方向転換を進めてきたと語ります。その象徴的な舞台が、千葉県にある木更津の旗艦店です。
これまでは高級ブランドが主役でしたが、現在は日々の暮らしを彩る「ライフスタイル系」の割合が10%ほどに高まりました。驚くべきことに、会場には高級車「メルセデス・ベンツ」の試乗車や、2019年7月に登場した家電メーカー「ダイソン」などが並び、爆発的な売上を記録しています。お得感や掘り出し物を見つけるという本来の魅力を追求した結果、来客1人あたりの購入店舗数はそれまでの約2店舗から3店舗へと増加し、確かな手応えを見せています。
富士山を望む絶景温泉も!「買い物合宿」へと変貌するリゾート空間
一方、三菱地所・サイモンが手がける「プレミアム・アウトレット」も2018年度の売上高が3535億3100万円に達し、好調を維持しています。静岡県の御殿場では、2019年12月に高級靴ブランドの「クリスチャンルブタン」を世界で初めて誘致することに成功しました。さらに、同社は敷地内にホテルや日帰り温泉施設をオープンさせ、圧倒的な富士山の絶景を楽しめる空間を提供しています。これにより、買い物目的だけでなく温泉をめざすリピーターも急増中です。
博報堂買物研究所の山本泰士上席研究員は、この現象を「スポーツの追い込み合宿」のようだと分析します。ネット上の膨大な情報から商品を選ぶことに疲れた消費者が、あえて「今日1日はアウトレットで買い物をし尽くす」と決めて自分を追い込んでいるというのです。共働きで忙しいミレニアル世代の家族にとって、週末のひとときを全員で楽しむための「ショッピングリゾート」への進化は、まさに時代が求めた必然の形と言えるでしょう。
身近な場所に現れた強敵「オフプライスストア」という新たな選択肢
しかし、絶好調のアウトレットモールにも「オフプライスストア」という新たなライバルが出現しました。これは、様々なメーカーの余剰在庫を1つの店舗に集め、正規価格の半値以下で販売する業態のことです。アパレル大手のワールドなどが2019年9月にさいたま市に開店した「アンドブリッジ」では、あえて店内にブランド名を目立たせずに陳列し、消費者が宝探し感覚で格安品を見つける楽しさを演出して人気を集めています。
ゲオホールディングスも2019年4月に横浜市に1号店を出店し、全国展開を急いでいます。アウトレットが車で1時間以上かかるのに対し、オフプライスストアは車で15分ほどの身近な場所にあり、日常的に通える点が強みです。これからは、非日常のレジャー体験としてアウトレットを楽しむ日と、近場で手軽に掘り出し物を探す日の使い分けが進むでしょう。消費者にとって選択肢が増えるのは喜ばしいことであり、今後の流通界の切磋琢磨に注目です。
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