2020年が幕を開けましたが、為替市場は早くも緊迫したムードに包まれています。年初から発生したアメリカとイランの対立激化により、中東の地政学的リスク(特定の地域における政治的、軍事的、社会的な緊張が世界情勢や経済に与える予測不可能な危険性)が一気に高まりました。三菱UFJ銀行のチーフアナリストである内田稔氏は、この両国の衝突が一線を越えたと指摘しており、今後の動向から目が離せません。
インターネット上のSNSでも、この緊迫した情勢に対して「年始から世界情勢が不穏すぎて、今後の資産運用が本当に不安」「いよいよ円高に振れる局面が来たのか」といった、警戒感をあらわにする声が数多く上がっています。投資家の間でも、リスクを避けるために安全な資産へ資金を避難させようとする姿勢が強まっており、こうした緊張状態は2020年を通じてなかなか和らぎそうにありません。
アメリカ国内に目を向けると、イランへの強硬な姿勢を見せるトランプ大統領の支持率が上昇傾向にあります。2020年11月には注目のアメリカ大統領選挙が控えているため、トランプ氏が自身の支持層をさらに固める目的で、今後も対外的に厳しい態度を崩さない可能性が極めて高いでしょう。その影響がイラン以外の国々にも波及するという懸念が、市場に冷や水を浴びせています。
過去最小の値幅から一転!波乱の相場展開へ
振り返れば、2019年の為替相場は年間の値動きの幅が約8円にとどまり、歴史的な小動きの1年となりました。これは、世界的な有事の際に買われやすい「安全通貨」としての円の需要と、金利が比較的高いことで買われたドルの需要が、絶妙なバランスで拮抗していたためです。しかし、内田氏によれば、2020年は相場の均衡が崩れ、ドル安・円高の方向へ大きく舵が切られることになりそうです。
その背景には、アメリカの主要な中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)による短期国債の買い入れ再開があります。市場に大量のドルが供給されることでドルの価値が下がりやすくなり、これまで保たれていた円とドルのパワーバランスが変化するのです。こうしたドルの需給緩和に加えて、米中貿易交渉の先行きや英国の欧州連合(EU)離脱問題など、世界経済を押し下げる要因が山積しています。
このような複合的なリスクから、2020年の為替相場は1ドル=101円という大幅な円高水準まで突き進むシナリオが現実味を帯びてきました。年間の値動きの幅も10円程度へと拡大し、前年とは比較にならないほどの激しい乱高下が予想されます。投資家にとっては、まさに一瞬の油断も許されない波乱に満ちた、スリリングな相場展開の1年となる覚悟が必要でしょう。
アメリカ経済の減速と米中関係の不透明さ
気になるアメリカの金融政策ですが、FRBは現在の政策金利を据え置く公算が大きいとみられています。とはいえ、国際通貨基金(IMF)の予測を下回る1%台後半へと経済成長がやや減速する見込みです。景気後退にまで陥るリスクは低いものの、物価の上昇が鈍いことから、事態打開のために年2回ほどの利下げ(中央銀行が景気を刺激するために金利を下げる政策)を行う予測も浮上しています。
さらに、部分合意に達したはずの米中貿易摩擦も、手放しで楽観視はできません。トランプ大統領は株価の暴落を嫌うとされていますが、中国に対して安易に譲歩することは、強硬姿勢を支持する有権者の離反を招きかねないからです。大統領選での勝利を最優先する以上、再び中国との間で火花が散り、世界市場が緊張の渦に巻き込まれる場面が2020年中に何度も訪れるはずです。
私自身の見解としても、政治の思惑が経済を振り回すこの状況下では、従来のセオリーが通用しない局面が増えると考えます。米イラン対立や米中関係の動向は、単なる二国間の問題ではなく、私たちの生活や資産に直結する大きな地殻変動の引き金です。不確実性が高まる2020年だからこそ、目先の値動きに惑わされず、国際ニュースの裏にある政治的背景まで深く見極める眼力が求められます。
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