世界中で巻き起こる異常気象のニュースに、胸を痛めている方も多いのではないでしょうか。2019年9月24日頃から猛威を振るい続けるオーストラリアの森林火災は、シドニー名物の年越し花火を中止すべきかという議論が巻き起こるほど深刻な事態となっています。消火活動に奔走する消防士やボランティアたちには、クリスマスも新年もありませんでした。SNS上でも「これほど長引くなんて異常だ」「地球が悲鳴を上げている」といった、現地の惨状を憂う声や危機感を募らせる投稿が数多く寄せられています。
毎年のように乾燥期の山火事に見舞われるオーストラリアですが、今回は明らかに様子が異なっています。地球温暖化がもたらす異例の高温によって火の勢いが衰えず、被害が拡大しているのです。それにもかかわらず、有数の石炭輸出国であるオーストラリアの政府は、石炭火力発電への依存から脱却しようとしていません。こうした姿勢に対して、国内外から厳しい批判が集まっています。しかし、これは決して遠い異国の出来事ではなく、私たち日本にとっても直面している深刻な問題なのです。
日本でも近頃、これまでに経験したことのないような集中豪雨が頻発しています。2019年10月12日に東日本を襲った台風19号は、記録的な大雨とともに広範囲に甚大な被害をもたらしました。この台風が猛烈な勢力へと急発達した原因は、地球温暖化に伴う海面水温の上昇にあると指摘されています。政府が2020年度の予算案に高額な洪水対策費を計上したのも、こうした目に見える異常気象への危機感の現れと言えるでしょう。
ここで私たちは、現在の政策が一時的な「対症療法」に偏っていないか、真剣に立ち止まって考える必要があります。災害を防ぐインフラ整備も大切ですが、温暖化の根本的な原因を解決する「原因療法」をおろそかにしては意味がありません。ヨーロッパの主要国では、二酸化炭素の排出量が極めて多い石炭火力発電を完全に廃止する方向へと舵を切っています。これに対して日本は、国内での新増設を諦めないばかりか、海外へのプラント輸出を政府開発援助の対象に据え続けているのが現状です。
専門家からは、このまま温暖化が暴走すれば、人間の手では制御不可能になるという恐ろしい警告が発せられています。産業革命前と比べて世界の平均気温はすでに約1度上昇しており、これを1.5度程度の上昇に抑え込めるかどうかが人類の分かれ道です。そのためには、これから迎える10年間の取り組みが命運を握ることになります。現に欧州連合は2019年末、2030年までに二酸化炭素排出量を半減させ、2050年には実質ゼロにするという高い目標に合意しました。
各国の具体的な動きを見ますと、環境先進国であるドイツでは、2019年に風力や太陽光といった再生可能エネルギーによる発電割合が、初めて化石燃料を上回りました。さらに、アメリカのタイム誌が2019年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」にスウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥンベリさんを選出したことも記憶に新しいでしょう。このように、地球環境を守るための明確な意思表示と具体的なアクションが、今や世界的なうねりとなっています。
ビジネスの領域でも、環境や社会、企業統治を重視する「ESG投資」が大きな注目を集めるようになりました。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉で、これらに配慮した企業を選んで投資する新しい評価基準のことです。世界が持続可能な社会に向けて激変する中、かつて1970年代の石油危機を乗り越え、「サンシャイン計画」で新エネルギー研究を先導したはずの日本は、すっかり取り残されてしまいました。
現在の日本は、国際環境団体から温暖化対策に後ろ向きな国へ贈られる「化石賞」の常連という不名誉な評価を受けています。2019年のラグビーワールドカップで来日した欧州のファンから「街中にプラスチックが溢れている」と指摘されたように、私たちの環境意識は世界の常識からズレつつあるのかもしれません。まもなく開催される東京オリンピックは猛暑との闘いが予想されますが、訪れる世界の人々から日本の「遅れ」を厳しく見透かされる舞台にならないよう、今こそ猛省し変革すべきです。
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