日本の農業界に、通信技術の力で新しい風が吹き込もうとしています。大手通信キャリアのNTTドコモは2020年1月14日、高知県四万十町にある高知県立農業担い手育成センターにおいて、スマートグラスを導入した遠隔指導の実証実験を2020年1月17日より開始すると発表しました。スマートグラスとは、眼鏡のように装着することで現実の景色にデジタル情報を重ねて表示できる最先端のウェアラブル端末のことです。この技術により、離れた場所にいる専門家からリアルタイムで指導を受けることが可能になります。
今回の画期的な実験は、まず現行の高速通信である4G環境からスタートし、2020年末を目処に次世代の超高速通信規格「5G」へと移行する計画です。5Gが導入されれば、大容量のデータを遅延なく送受信できるようになるため、映像の鮮明さが飛躍的に向上します。これにより、これまでは熟練者の長年の経験や勘、あるいは現場の感覚に頼らざるを得なかった複雑な栽培技術を「見える化」し、経験の浅い就農前の研修生を効率的に育成することを目指しているのです。
実際の実験では、センター内の圃場(農作物を育てる畑)と本館・別館を通信で接続します。マイクとスピーカーを内蔵したスマートグラスを研修生が装着し、作業中に見ている光景をそのまま指導員のパソコンへリアルタイムに配信する仕組みです。例えば、研修生がナスの表面にある微細な傷を発見した際、スマートグラスを通じて「状態を確認してください」と遠隔地の指導員に音声で呼びかけることができます。
呼びかけを受けた指導員は、送られてきた映像を即座に画像として解析し、「この傷は虫による食害で、病気ではないので安心してください」と音声で回答します。さらに、その傷の画像に対して具体的な対処法をパソコン上で描き込んで送信すると、研修生が見ているスマートグラスの画面上にその指示がダイレクトに投影されるのです。まるで熟練の指導員がすぐ隣に立って手取り足取り教えてくれているかのような、手厚い教育環境が実現します。
このニュースに対し、SNS上では「これなら地方の深刻な後継者不足や人手不足を解消できるかもしれない」「技術の継承がスムーズになり、農業に参入する若者が増えそう」といった期待の声が多数寄せられています。一方で、「スマートグラスをかけたまま夏の暑いビニールハウスで長時間作業するのは体への負担が大きそう」「通信環境の安定性がどこまで保てるかが鍵になりそうだ」という、実用面での課題を指摘する冷静な意見も見られました。
私個人の意見として、この試みは単なる効率化の枠を超え、日本の一次産業を守るための極めて重要な一歩であると感じています。農業人口の高齢化が進む中、技術習得のハードルを下げて若手の育成期間を短縮することは急務です。2年間にわたるこの実験で指導のノウハウが蓄積され、全国の農家にこのシステムが普及すれば、若者が安心して農業に挑戦できる魅力的な産業へと進化を遂げるに違いありません。
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