石川県金沢市で140周年という輝かしい節目を迎えた老舗書店「うつのみや」が、出版不況の波を物ともせず驚異的な成果を上げています。特に注目すべきは、ネット通販が主流となった現代において、あえて「人」が直接本を届ける「外商」に注力している点でしょう。婦人雑誌の新年号が発売される2019年11月下旬、同店の外商部門は1年で最も活気あふれる時期を迎えており、その販売部数は約1万部という国内最大級の規模を誇っています。
SNS上では「重い雑誌を玄関まで届けてくれるのは本当に助かる」「付録が豪華な時期だからこそ、確実に手に入る安心感が嬉しい」といった、地域密着型のサービスを支持する声が目立ちます。宇都宮元樹社長が「本は通行手形」と表現するように、本を届ける行為は単なる物流ではありません。それは顧客の自宅や企業に上がり込み、直接コミュニケーションを図るための貴重な機会となっており、信頼関係の構築に大きく寄与しているのです。
属性を見抜く提案型営業と買い物弱者を救う使命感
同店の強みは、単に注文された品を届けるだけでなく、顧客の属性に合わせた「提案型営業」にあります。外商とは、店舗を構えて客を待つのではなく、担当者が直接顧客のもとへ出向く営業形態を指しますが、うつのみやではこれを徹底しています。例えば、既婚男性には奥様へのプレゼントとして、経営者には福利厚生の一環として女性社員への配布を勧めるなど、相手のライフスタイルに踏み込んだ提案が部数を伸ばす秘策となっているようです。
インターネットの操作に不慣れな高齢者や、店舗まで足を運ぶのが困難な「買い物弱者」にとって、定期的に訪問してくれる外商担当者は非常に心強い存在といえるでしょう。近隣の同業者が外商から撤退する中で、顧客の引き継ぎ依頼が舞い込むほど、この対面サービスの需要は高まっています。効率化が叫ばれる時代ですが、顔の見える関係性が生む安心感こそが、地域のインフラとしての役割を果たしているのだと私は強く感じます。
2019年12月05日現在の展望として、同社はこの強固な配送ネットワークを本以外の分野にも広げようとしています。営業車に生活消耗品を積み込み、本と一緒に届ける新サービスの検討は、地域の困りごとを解決する素晴らしい一手となるはずです。デジタルが進む今だからこそ、地域に根ざした老舗書店の「攻めの外商」が、これからの小売業の在り方に一つの答えを提示してくれるに違いありません。
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