安倍晋三首相は2020年1月20日の午後、今後の国政の指針を示す施政方針演説に臨みます。自民党総裁としての任期を2021年9月まで残し、残り1年8カ月となった今、政権の集大成を見据えた舵取りが本格化する見通しです。注目の衆議院の解散・総選挙については、東京五輪が閉幕する9月以降になるとの予測が広がっています。首相はこの通常国会を通じて政局の動向を慎重に見極め、悲願である憲法改正や解散の時期を最終判断する構えでしょう。
今回の通常国会で首相が最優先課題として位置づけているのが、憲法改正の手続きを定める「国民投票法案」の成立です。演説の締めくくりには、これまでの7年間にわたる執念を込めて「夢を夢のままで終わらせてはいけない」と力強く訴え、改憲に向けた並々ならぬ執念をにじませています。SNS上では「いよいよ改憲に向けて動き出すのか」と期待する声がある一方で、「優先すべきは他にあるのではないか」といった疑問の声も噴出し、議論が白熱しています。
注目すべきは、政府が提出する法案の数を2012年の第2次安倍政権発足以降で最も少ない五十数本に絞り込んだ点です。国会には、政府が提出した法案がすべて成立した後に、国民投票法のような議員が提出した法案の採決を行うという暗黙のルールがあります。あえて法案をミニマムに抑えた背景には、審議をスピーディーに進めて改憲論議に入る時間を前倒ししたいという、政権側の明確な戦略が透けて見えていると言えます。
東京五輪・パラリンピックが閉幕する2020年9月、安倍首相は政権の未来を左右する重大な決断を迫られるでしょう。もし通常国会で憲法改正の議論が進展しなかった場合、任期内の発議を勝ち取るために再び解散総選挙という勝負に出るシナリオが浮上しています。しかし、選挙の結果として改憲発議に必要な「3分の2」の議席を大きく割り込めば、計画は頓挫します。党内から一気に首相の退陣論が巻き起こる危険性もあり、まさに諸刃の剣です。
その一方で、通常国会で改憲への道筋が見えてきた場合には、まったく別の選択肢も生まれます。自ら解散を行わず、2020年9月末の自民党役員の任期満了に合わせ、内閣改造と党人事の刷新を行うというプランです。このルートを選べば、首相は2021年9月の総裁任期を全うし、次を担う「ポスト安倍」の候補へとスムーズにバトンを繋ぐことが可能となります。現行の憲法下では任期満了での衆院選は極めて異例ですが、政権内には楽観論も存在します。
いずれの道を歩むとしても、政権に突きつけられた不信感を払拭することは絶対に欠かせません。今回の演説では、物議を醸している「桜を見る会」の疑惑や、カジノを含む統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件といった逆風には一切触れない方針です。予算案に計上していないことが釈明の理由ですが、ネット上では「説明責任を果たしていない」と批判的な書き込みが相次いでいます。国民の納得を得られるかは極めて不透明な状況です。
安倍首相は2020年8月を迎えると、連続でも通算でも日本の歴史上で最も長く首相を務めたリーダーとなります。しかし、悲願の憲法改正を成し遂げるための最大の敵は、野党ではなく、長期政権ゆえに生じる身内の「おごり」や「緩み」なのかもしれません。この一世一代の勝負となる国会で、どのようなリーダーシップを発揮するのか、日本中がその一挙手一投足に注目しています。
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