ルーツを探る奇跡の旅!作家・星野博美さんが紐解く漁師の伝統衣装「万祝」に隠された家族の絆とクスッと笑える愛おしい真実

私たちは、自分たちの先祖がどのような道を歩んできたのかを知る機会がどれほどあるでしょうか。作家であり写真家でもある星野博美さんが、自身のルーツと実家に伝わる家宝をめぐる、なんとも温かくてユーモラスなエピソードを明かしてくれました。2020年1月20日、星野さんはご自身の一族の歴史と、漁師の伝統的な晴れ着である「万祝(まいわい)」にまつわる不思議な縁について語っています。それは一見すると、美しく完璧な家族の歴史のようでありながら、思わず笑顔になってしまう素敵なオチが隠されている物語なのです。

星野さんのご先祖は、千葉県の外房に位置し、名曲「月の砂漠」の舞台としても有名な御宿(おんじゅく)の海岸で、代々イワシ漁を営んできた誇り高き漁師たちでした。当時の漁村の生活は、老若男女を問わず、全員が生きるために働き続ける過酷な労働環境だったといいます。男性たちが命がけで船を操り、女性たちは広大な砂浜でイワシを干して肥料に加工しました。さらに、幼い子どもたちまでもがこぼれ落ちた魚を集め、お年寄りは網の補修をして現役の漁師たちを支えるという、まさに一族が一丸となった日々を送っていたのです。

そんな星野さんは幼少期に、祖父から「一族は昔、紀州(現在の和歌山県)から海を渡ってきた」という壮大な歴史を耳にします。この好奇心を刺激する言葉の真相を突き止めるため、彼女は御宿の長老たちへの取材を重ね、はるばる和歌山県の加太(かだ)や広(ひろ)まで足を運びました。そこで待っていたのは、先祖と深い縁を持つ人物との奇跡的な出会いだったのです。この大いなる旅の成果は、2011年に『コンニャク屋漂流記』という一冊の素晴らしいノンフィクション書籍として結実することになりました。

ここで、専門的な言葉について少し詳しく解説をいたしましょう。星野さんの著書のタイトルにある「コンニャク屋」とは、食材を売るお店のことではなく、星野さんのご実家に伝わる「屋号(やごう)」と呼ばれるものです。屋号とは、江戸時代などに一族や家を区別するために使われた商業上の名前や家名のことで、星野さんの先祖が漁師から陸に上がり、おでん屋のような商売を始めた時期に付けられたとされています。自分のルーツが、こうしたユニークな名前として残っているのは、とても味わい深い文化ですね。

そして、この物語の主役となるのが、星野家の家宝として語り継がれてきた「万祝(まいわい)」という美しい衣服です。万祝とは、江戸時代から始まったとされる伝統的な漁師の晴れ着のことで、大漁の際や正月の記念として、船主にあたる網元から漁師たちへお祝いとして配られた特別な木綿の着物を指します。星野さんの実家にあった万祝には、イワシの絵柄とともに、誇らしげに船の名前が染め抜かれていました。星野さんはこの一族の絆の象徴を、文学賞の授賞式で晴れ着として羽織り、家族への深い愛を表現したのです。

しかし、ここでSNSでも「まさかの結末にほっこりした」「星野さんのご家族が最高すぎる」と大きな反響を呼ぶ、驚きの事実が近年になって発覚します。なんと、この万祝は星野家に代々伝わるものではなく、おじい様が過去にどこかの宴会に出席した際、誰かから偶然もらってきたものだと判明したのです。感動の授賞式から一転、思わず「早く言ってよ!」と突っ込みたくなるような、なんとも大らかなエピソードではないでしょうか。

私はこのお話を伺い、歴史の真実がどうであれ、その不完全さこそが家族の本当の温かさであり、魅力なのではないかと強く感じました。誰かにとっての誇りであった万祝が、巡り巡って星野さんの手に渡り、一族の絆を再確認するきっかけとなった事実は変わりません。完璧な家系図よりも、こうした少し抜けたところのある「いい加減さ」を愛せる星野さんの優しい眼差しに、多くの読者が心を救われるはずです。血のつながりを超えた、人間味あふれる歴史の愛おしさに、誰もが優しい気持ちになれることでしょう。

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