現代の日本において、ライフスタイルの変化に伴い葬儀のあり方も多様化しています。2013年にお坊さんの手配サービスである「お坊さん便」を開始した株式会社よりそうは、これまでにない画期的な取り組みで多くの注目を集めてきました。身近にお寺との付き合いがない方や、葬儀の費用をなるべく抑えたいという現代人のニーズに寄り添ったこのサービスは、時代の要請に応える形でまたたく間に世間へと浸透していったのです。
核家族化が進んだ現代では、先祖代々のお墓を管理するお寺である「菩提寺(ぼだいじ)」との関係が薄れている人が少なくありません。そのため、いざという時に読経をしてくれるお坊さんをどこで見つければよいか分からず、結果として儀式を行わないケースが増加しています。しかし、四十九日や一周忌といった大切な節目に供養ができなかったことで、後から深い悔いを残してしまう遺族が後を絶たないのが現状です。
このような課題を解決すべく誕生したお坊さん便は、多くの人々に広く認知してもらうための戦略として大手通販サイトのアマゾン(Amazon)への出品を決行しました。この前代未聞の試みはインターネット上で瞬く間に拡散され、大きな話題を呼ぶことになります。手軽に供養の依頼ができる利便性が評価される一方で、SNSなどでは「仏教の商業化ではないか」といった厳しい批判の声も巻き起こり、激しい議論が交わされました。
インターネット上では「明朗会計で非常にありがたい」という賛同の意見がある一方で、「お坊さんを日用品と同じように扱うのは違和感がある」といった戸惑いの声も多く見られました。プラットフォームの特性上、サービスの利便性ばかりが強調されてしまい、企業側が本来届けたかった「遺族の心に寄り添う」という真摯な想いが、利用者に正しく伝わりにくいというジレンマが生じてしまったのです。
当時の状況を見渡すと、アマゾン経由での売上は確実に伸びていくことが約束されている状態でした。しかし、お坊さん手配事業部を率いる小野敬明さんは、2019年10月度をもってアマゾンからの撤退という驚きの決断を下します。目先の利益を追求するのではなく、サービスに関わる遺族やお坊さんの双方が心から納得し、幸せを感じられる環境を守ることこそが最優先であると判断したためです。
利益を最優先するビジネスモデルは、時に人々の大切な感情を置き去りにしてしまう危険性を孕んでいます。しかし、よりそうが実践したように、商売に関わるすべての人の幸福を第一に願う姿勢こそが、結果として顧客からの絶大な信頼へと繋がるのではないでしょうか。お金の損得を超えた場所にある「心の豊かさ」に価値を見出すビジネスこそが、これからの令和の時代に長く愛され続けるに違いないと私は確信しています。
驚くべきことに、アマゾンから撤退した後も自社サイトへの問い合わせは減るどころか、むしろ増加傾向を維持しています。独自の窓口を通じてサービスの意義を丁寧に直接説明できるようになったことが、利用者の安心感を生み出しているようです。販路の拡大よりも、一人ひとりの顧客と真摯に向き合う対話を重視した選択が、結果として持続可能な素晴らしいビジネスの形を証明しています。
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