愛媛県といえば、みずみずしいミカンや歴史ある道後温泉を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。2020年01月09日、四国の未来を大きく変える一人の「助っ人」として、株式会社アトリウムの社長である国分美由紀氏が注目を集めています。彼女はもともと愛知県出身で、看護師として働いていました。しかし約30年前、医師である夫の赴任をきっかけに、それまで縁もゆかりもなかった愛媛県へと移住することになったのです。
見知らぬ土地への移動は、誰しも不安が募るものです。国分氏も松山から八幡浜市へ向かう列車の中では、心細さで胸がいっぱいだったと当時を振り返ります。ところが、そんな不安を吹き飛ばしたのは、八幡浜の人々が持つ温かさと開放的な雰囲気でした。地域の方々の優しい声かけや豊かな自然に触れるうちに、当初は2年ほどで去る予定だったこの場所に定住し、子育てをしようと決意するほど愛媛の魅力に引き込まれていったそうです。
八幡浜や南予地域で過ごす中で、国分氏は皮が薄くて格別に甘い「温州ミカン」の素晴らしさに出会います。なぜこれほど上質なかんきつが全国に流通していないのか不思議に思うと同時に、地元の方々がこぼす自虐的な声に疑問を抱きました。可能性を秘めた地域の魅力を高めるため、自分にできることはないかと模索し始めます。SNSでも「地元の人が気づかない魅力を外の視点で見つける姿に共感する」と、彼女の姿勢を称賛する声が上がっています。
移住から数年後、国分氏は欧州から日本へ伝わり始めた「アロマテラピー」に出会いました。アロマテラピーとは、植物から抽出した香り成分(エッセンシャルオイル)を用いて、心身をリラックスさせたり健康を増進させたりする自然療法のことです。彼女は海外へも赴いて熱心に勉強を重ね、2007年には八幡浜市内に念願のスクールを開設しました。このアロマの知識が、のちに愛媛のかんきつと結びつき、新たな奇跡を生み出す原動力となります。
ラベンダーなどの香りが一般的な中、身近に豊富にあるかんきつを使った芳香剤がないことに気づいた国分氏は、自ら香り成分の抽出に挑みます。試行錯誤の末に開発したハンドクリームや石鹸、香水は周囲から大絶賛され、大きな自信へとつながりました。ネット上では「愛媛のミカンの香りのコスメなんて絶対に癒やされる」「お土産にほしい」といった投稿が相次ぎ、早くもトレンドに敏感な人々の間で話題を呼んでいます。
さらに国分氏の挑戦は止まりません。2015年頃に香りを取り出す機械を購入した彼女は、残ったかんきつの皮や実を有効活用しようと考え、2016年に特製マーマレードを完成させました。それまで地元では自家消費が中心だったマーマレードですが、道の駅や首都圏の見本市へ出品するとたちまち評判になります。自分たちの味が世界でどこまで通用するか確かめるため、英国の品評会に挑戦したところ、なんと3年連続で金賞を受賞するという快挙を成し遂げました。
世界が認めた味というお墨付きを得たことで、地域おこしの熱量はさらに高まっています。2019年には八幡浜市で「世界マーマレードアワード」が開催され、国分氏も運営に深く携わりました。イベントに訪れた海外のゲストから、地元の素晴らしい自然スポットを逆に教えてもらうこともあったそうです。外からの新鮮な視点を忘れないことが、地域を輝かせ続ける秘訣なのでしょう。
地域に眠る宝物を、これまでにないアロマやマーマレードという形で世界へ発信した国分氏の手腕には目を見張るものがあります。外部から来た人間だからこそ、地元の当たり前が特別な価値であると気づけたのではないでしょうか。今後はマーマレードの団体作りも視野に入れているとのことで、彼女が巻き起こす四国の地方創生ムーブメントから、これからも目が離せそうにありません。
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