大手総合商社の伊藤忠商事が、これまでのビジネスモデルを根底から覆す大胆な組織改革に乗り出しました。従来の商社は、自分たちが確保した商品をいかに市場へ供給するかという「プロダクトアウト(作り手都合の販売)」の思考が主流でした。しかし同社は、買い手の視点や市場の潜在ニーズを最優先にする「マーケットイン(顧客起点)」の姿勢へ劇的なシフトを遂げようとしています。
その変革の中心を担うのが、2019年7月1日に誕生した「第8カンパニー」という新組織です。独自の縦割り組織が根強かった同社において、新しい部門の設立は実に22年ぶりの出来事でした。特筆すべきは、発案からわずか3カ月という異例のスピードで立ち上げられた点です。この迅速な決断の背景には、米アマゾン・ドット・コムに代表される巨大デジタル企業がリアルの小売市場へ侵攻してきたことへの強い危機感がありました。
インターネット上では「商社が本気で動き出した」「流通の仕組みがガラリと変わりそうでワクワクする」といった期待の声が多数寄せられています。巨大な競合が迫る中、守りに入らず攻めの姿勢に転じた決断力に、多くの消費者が注目しているようです。私自身も、過去の成功体験に縛られがちな大企業が、ここまで迅速に自己変革へ舵を切ったことに深い感銘を覚えました。
ファミリーマートの巨大基盤を武器に変えるラボ的挑戦
第8カンパニーの重要なミッションは、傘下にあるファミリーマートなどの顧客基盤を活かし、革新的なサービスを生み出すことです。全国に約1万6500店舗を構え、1日あたりおよそ1500万人が訪れるこの巨大なネットワークは、新技術を検証する最高の実験場となります。これまでは単に商品を卸す対象だったコンビニを、新しい価値を創造する舞台へと変貌させる狙いがあります。
すでに具体的な動きも始まっており、2020年1月末には画像認識AI(人工知能)を手掛けるスタートアップ企業との業務提携を決めました。AIとは、人間の知的な振る舞いを模倣するコンピュータ技術のことです。この技術を活用し、店舗での人手不足を解消する人型キャラクターの電子看板など、消費者の不満を解消する施策を次々と形にしています。
既存のビジネスモデルが限界を迎える中で、「イノベーションのジレンマ(優良企業が既存の成功に囚われ、革新に遅れる現象)」を打破しようとする同社の試みは極めて本質的です。走りながら洗練させていくというベンチャー企業のようなスピード感こそ、変化の激しい現代を生き抜くために必要な戦略だと言えるでしょう。
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