日本のものづくり産業に大きな激震が走りました。三井E&Sホールディングスは2020年1月23日、グループで多数の株式を保有する昭和飛行機工業の全株式を、アメリカの有力投資ファンドであるベインキャピタルに売却すると決定したのです。売却額は約455億円にのぼり、経済界でも大きな注目を集めています。今回の決断は、造船事業などの不振に苦しむ三井E&Sが打ち出した、大胆な経営合理化策の一環と言えるでしょう。
買収側となるベインキャピタルは、2020年2月10日から2020年3月10日までの期間で株式公開買い付け(TOB)を実施する予定です。TOBとは、企業の支配権を確保するために、価格や期間をあらかじめ公表して不特定多数の株主から市場外で株式を買い集める手法を指します。この手続きが順調に成立した場合、東証2部に上場している昭和飛行機工業は、最終的に上場廃止となる見通しが立っています。
ネット上やSNSでは「老舗企業が外資ファンドの傘下に入るのは寂しい」「資産価値が高い企業だけに今後の展開が気になる」といった驚きや懸念の声が数多く上がりました。その一方で、「業績を立て直すためには、このタイミングでの英断もやむを得ないのではないか」という冷静な分析を見せるユーザーも少なくありません。多くの人々が、伝統ある国内企業の行く末を複雑な心境で見守っている様子が窺えます。
昭和飛行機工業は航空機の重要部品を製造しているだけでなく、東京都内に大型のショッピングセンターといった優良な不動産を多数保有しているのが強みです。2019年3月期の連結売上高は約254億円を記録しており、非常に安定した経営基盤を築いてきました。だからこそ、今回の売却劇は市場関係者にとっても驚きをもって受け止められたに違いありません。それほどまでに三井E&S側の財務状況は切迫していたのです。
現在の三井E&Sは、インドネシアにおける火力発電所の建設工事が遅延した影響で、巨額の損失を計上せざるを得ない事態に陥っています。結果として2020年3月期の連結最終損益は880億円の赤字になる見込みであり、ついに3期連続の赤字という極めて厳しい局面を迎えました。事態を重く見た経営陣は、すでに2019年11月に1000人規模の配置転換を発表しており、組織の縮小と見直しが急ピッチで進められています。
手元の資金を確保するため、企業は2020年3月末までに約700億円規模の事業や資産を売却する方針を掲げて突っ走ってきました。今回の昭和飛行機工業の売却は、まさにその計画を完遂するための本丸だったと考えられます。今後は非中核と位置づけた事業を果敢に手放すことで、主力の舶用エンジンや海洋開発といった強みのある機械関連事業へ、限られた経営資源を一点集中させていく構えです。
筆者としては、この痛みを伴うリストラは日本の製造業が生き残るために避けて通れない試練だと考えます。かつての栄光に固執して決断を先延ばしにするよりも、稼げるコア事業へ選択と集中を図る戦略は極めて合理的です。外資ファンドのノウハウを吸収した昭和飛行機工業が新たな価値を創出し、三井E&Sが再び機械事業で世界のトップランナーへ返り咲く日を、大いに期待するとともに応援したいと思います。
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