林芙美子『放浪記』にも登場!新潟・直江津の老舗「三野屋」が守る伝統の和菓子「継続だんご」誕生の秘密と大火を乗り越えた奇跡の絆

文学の香り漂う新潟県上越市の直江津駅近くに、歴史の荒波を乗り越えて愛され続ける奇跡の和菓子があります。それは、国民栄誉賞を受賞した大女優の故・森光子さんが主役を演じ続けた名作舞台『放浪記』の原作にも登場する銘菓です。林芙美子が1930年(昭和5年)に発表した作中で、主人公が「この団子の名前は何と言うんですか?」と問いかけ、店員が「ヘエ継続だんごです」と答える印象的な場面が描かれています。この歴史的なお菓子を今に伝えるのが、1890年前後に創業した老舗和菓子店「三野屋」です。

SNS上でも「放浪記の舞台を歩きながら食べる継続だんごは格別」「香ばしい白あんと寒天の艶がたまらない」と、文学ファンやスイーツ好きの間で大きな反響を呼んでいます。この「継続だんご」は、一般的なお団子とは少し異なるユニークな特徴を持っています。それは、串に刺さっているのがお餅ではなく「白あん」そのものであるという点です。丸めた4つの白あんを串に刺して表面を香ばしくあぶり、仕上げに溶かした寒天をコーティングしています。保存料などの添加物を一切使用しない、職人の技が詰まった逸品なのです。

ここで、お菓子作りにおいて重要な役割を果たす「寒天(かんてん)」について簡単にご説明します。寒天とは、テングサなどの海藻を煮出して固め、凍結乾燥させた天然の食材です。和菓子では、表面に美しい「つや」を出し、時間が経っても生地が乾燥して硬くなるのを防ぐための保水目的でよく使われます。三野屋では1931年に取得した商標登録証明書を今も大切に店内に飾り、当時と全く変わらない無添加の製法を維持しています。現在は4代目の重原稔氏が、父の征氏と共に伝統の味を頑なに守り続けているのです。

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大火災からの復活!地域の人々と紡いだ恩返しの物語

現在、製造のほぼ全てを担う稔氏ですが、その心には今も深く刻まれている忘れられない記憶があります。それは東京での修業を終えて店に戻って3年目、1999年11月7日の未明に起きた悲劇でした。午前4時半過ぎ、けたたましくシャッターを叩く音で目を覚ますと、近隣から出火した炎がまたたく間に燃え広がっていたのです。午前8時前にようやく鎮火したときには、三野屋の店舗も自宅もすべて灰に帰していました。当時27歳だった稔氏は、それまで主に配達を担当しており、すべての菓子作りを任されていたわけではありませんでした。

しかし、絶望の淵に立たされた稔氏を救ったのは、他でもない地域住民の温かい絆でした。火の手が迫る中、近所の人々は「稔くんは自分の荷物を運び出せ!店のものは俺たちが運ぶ!」と叫び、命がけで看板やショーケース、大切な商品を運び出してくれたのです。この地域の深い愛に触れた稔氏は「本当の意味で店を継ぐ」という強い覚悟を決めました。地域の人がわざわざ足を運んでくれるような和菓子を作り続けることこそが、街への最大の恩返しになると心に誓い、見事に店を復活させたのです。

そもそも「継続だんご」という独特な名前には、1903年(明治36年)にまで遡る歴史があります。当時、交通の要所であった直江津の米穀取引所に閉鎖の指令が下りました。これに対し、住民が一丸となって存続を求める嘆願運動を起こした結果、見事に取引所の「継続」が決定したのです。この地域一丸となった勝利を祝い、記念に誕生したのがこのお団子でした。時代の風雪に耐え抜き、人々の熱い思いが詰まったこの名味を、三野屋はこれからも次の世代へと大切につなぎ続けていくことでしょう。

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