英国総選挙を揺るがしたSNSの「偽装工作」!ネット選挙の暴走と民主主義の危機を追う

2019年12月12日に投開票が行われたイギリスの総選挙は、欧州連合(EU)離脱という国の命運を分ける歴史的な戦いとなりました。この選挙戦で最も注目を集めたのは、これまでの常識を覆す激しい「ネット選挙」の攻防です。SNSは若者の政治関心を高める大きな原動力となりましたが、同時に制御不能なリスクを露呈させる結果を招いています。

特に物議を醸したのが、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党の驚くべきSNS戦略でした。2019年11月中旬、党首同士のテレビ討論が放映される中、保守党は公式のツイッターアカウント名を、あろうことか「ファクトチェックUK」という名称に一時変更したのです。これは、あたかも第三者の中立的な検証機関であるかのように装い、対立候補を攻撃するための巧妙な手法でした。

この「なりすまし」とも呼べる手法には、SNS上で凄まじい批判が巻き起こりました。「民主主義を軽視する卑劣な行為だ」といった怒りの声が相次ぎ、ついに米ツイッター社も「誤解を招く行為を続けるなら断固とした措置をとる」と、与党に対して厳しいイエローカードを突きつける事態に発展したのです。世論を味方につけるはずの戦略が、かえって不信感を買う結果となりました。

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急膨張するネット宣伝費と追いつかない法規制

イギリスにおける選挙戦の主戦場が、現実の世界からデジタル空間へと劇的に移行している事実は、その支出額に如実に表れています。2011年には宣伝費全体のわずか0.3%に過ぎなかったネット広告費が、2017年には42.8%と、半分に迫る勢いで急増しました。しかし、この爆発的な普及に対して、それを縛るための法的なルール作りは、残念ながら全く追いついていないのが現状です。

例えば、日本では公職選挙法によってネット上のなりすましや悪質な中傷には厳格な罰則が設けられています。対してイギリスでは、ネット選挙に特化した支出制限や、広告の主体の明示を義務付ける具体的な法規制がほぼ存在しません。そのため、どこから資金が出て、誰がどのような意図で情報を拡散しているのかが不透明な「闇の戦い」が野放しにされているのです。

さらに深刻なのは、国外からの不当な介入を防ぐ手立てがほとんどない点でしょう。現在の状況は、巨大IT企業の自主規制という、いわば「企業の善意」に委ねられています。ロンドン大学キングスカレッジのマーティン・ムーア上級講師が指摘するように、ネットは政治参加の壁を壊した一方で、悪意ある第三者が議論をかき回す絶好の温床にもなってしまいました。

私は、こうしたネット上での泥沼の中傷合戦や偽情報の氾濫は、長期的に見て民主主義そのものを崩壊させかねない危うさを孕んでいると考えます。選挙という神聖な場において、目先の勝利だけを優先し、有権者を欺くような行為が常態化すれば、政治に対する信頼は失われるばかりです。もはやネット選挙を切り離すことはできませんが、公正な競争を保つための抜本的なルール整備は急務です。

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