欧州連合(EU)からの離脱という歴史的な岐路に立つイギリスで、2019年12月12日に下院総選挙が実施されることが決定しました。ボリス・ジョンソン首相は、自らの解散権を厳しく制限する法律が存在するにもかかわらず、わずか2行の「特例法」を制定するという驚くべき手法で解散を強行したのです。
このニュースに対し、SNS上では「強引すぎるが、決断できない政治よりはマシだ」という支持の声や、「法の精神を軽んじる危険な前例だ」といった批判が渦巻いています。民主主義の母国と呼ばれるイギリスで起きたこの事態は、実は日本における「解散権」を巡る憲法議論にも、極めて大きな波紋を広げようとしています。
法の網をかいくぐる「2行の魔法」とは?
かつてのイギリスでは、首相は自分の好きなタイミングで解散を選べましたが、2011年に制定された「議会任期固定法」によってその力は封じられました。この法律は、解散に全議員の3分の2以上の賛成を求めるもので、野党の同意なしには不可能なほど高いハードルが設定されています。
しかし、ジョンソン首相は2019年10月29日、総選挙の日付を指定するだけのシンプルな特例法案を提出しました。この「一般法」であれば、過半数の賛成だけで成立するため、高いハードルを回避できます。成文憲法を持たない英国では、新しい法律が古い法律を上書きできるという仕組みを逆手に取った、まさに「法の骨抜き」とも呼べる奇策だったのです。
この手法が受け入れられた背景には、EU離脱を巡り「何も決められない」議会の現状に対する国民の強い苛立ちがあったことは間違いありません。政治の停滞を打破するためなら、多少の法的な逸脱も厭わないという空気が、イギリス国内を支配しているように感じられます。
日本の「首相の専権事項」はどう変わる?
このイギリスの動向は、他国事ではありません。日本では、衆議院の解散は「首相の専権事項」とされ、非常に強力な権限として定着しています。立憲民主党などの野党は、イギリスの事例をモデルに、首相による恣意的な解散を制限すべきだと主張してきました。
ところが、そのお手本としていたイギリスの制度が現実を前に形骸化してしまったことは、日本の解散権制限論にとって大きな打撃となるでしょう。もし解散を制限することで「決められない政治」を招くのであれば、それは果たして国民の利益にかなうのかという根本的な問いが、改めて突きつけられています。
私個人の意見としては、法をテクニカルにすり抜ける手法には懸念を抱きますが、国家の危機において政治が機能不全に陥ることはそれ以上に避けるべき事態だと考えます。ルールをガチガチに固めることよりも、そのルールがいかに民意を反映し、政治を前に進める力になるかを議論すべき時期に来ているのではないでしょうか。
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