格差社会や社会の階層化という言葉は頻繁に耳にするものの、「階級」と聞くとどこか古めかしい印象を受けるかもしれません。しかし、伝統的に職業をベースとして階級を論じてきたイギリスにおいて、その常識を覆す全く新しい社会分析が注目を集めています。マイク・サヴィジ氏の著書『SOCIAL CLASS IN THE 21ST CENTURY』は、現代の複雑な社会構造を鮮やかに解き明かした一冊です。SNS上でも「これまでの階級観がガラリと変わった」「自分はどこに属するのか気になる」と大きな反響を呼んでいます。
本書が従来の職業分類に代わって導入したのが、3つの「資本」という画期的な尺度です。具体的には、不動産や収入を指す「経済資本」、趣味や教養といったライフスタイルを示す「文化資本」、そして友人関係や人脈の広がりを意味する「社会関係資本」を指します。文化資本とは、どのような音楽を聴き、どんな活動に関心を持つかという内面的な豊かさのことです。また社会関係資本とは、いざという時に頼れるネットワークや所属コミュニティのことであり、現代を生き抜く上で欠かせない要素とされています。
この3つの指標を掛け合わせた結果、イギリス社会には驚きの「7つの階級」が存在することが判明しました。全ての資本を完璧に手にした最上位の「エリート」から、どれも蓄積できずに苦しむ最下位の「プレカリアート」まで、両極端な層が生まれています。プレカリアートとは、非正規雇用などで労働環境が極めて不安定な人々を指す言葉です。約16万人を対象とした大規模な「英国階級調査」に基づいているため、そのデータには圧倒的な説得力があります。教育が格差を解消するどころか、大学の序列化によって格差を固定化しているという指摘は、実に痛烈だと言えるでしょう。
インタビュー調査から見えてくる人々の本音も非常に興味深いものです。表向きは「階級なんて関係ない、個人の努力次第だ」と語る人々が、他人の学歴や趣味との違いに対しては極めて敏感に反応しています。境界線が曖昧になったからこそ、むしろ自分の立ち位置が気になって仕方がないという現代人の心理がリアルに浮き彫りになりました。イギリスにおいて階級は決して消滅したわけではなく、私たちの意識の奥底に形を変えて深く潜り込んでいるのが現状なのです。
私自身の視点から言わせていただければ、この問題は決して遠い異国の出来事ではありません。現在の日本に目を向けると、明確な二極化は見えにくいものの、かつて社会を支えた「一億総中流」という強固な中間層は確実に弱体化しています。2020年01月25日時点で、いわゆる「就職氷河期世代」が大きな塊を形成し、非正規雇用の拡大による貧困リスクは誰にとっても身近な脅威となりました。SNSの普及によって個人の人脈やセンスが可視化される今、日本でも経済力以外の資本が格差を広げる決定打になりつつあると感じます。
「階級」という言葉を日本にそのまま適応すべきかという点には議論の余地があるでしょう。しかし、経済・文化・つながりという3つの視点で社会を捉え直すアプローチは、私たちが進むべき未来を考える上で極めて重要なヒントを与えてくれます。この不確実な時代を生き抜くために、まずは自身の「資本」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
コメント