化粧品の口コミサイトでお馴染みの「@(アット)コスメ」を運営するアイスタイルが、2020年01月10日に都内の一等地へ大型の化粧品専門店をオープンさせました。JR原宿駅の目の前に位置する「@cosme TOKYO」は、売り場面積や取り扱う商品の数でも業界トップクラスを誇る巨大な店舗です。しかし、このお店が本当に追い求めているものは、単なるお店の売り上げではありません。実は、今後のビジネスの命運を握る「極秘のデータ」を集めることが最大の目的となっているのです。
ネット上では、オープン直後から「一日中いられるコスメのテーマパーク」「デパコスからプチプラまで試せて最高」といった歓喜の声が溢れています。店内の入り口正面には、サイトのランキングで受賞した人気商品がずらりと並び、お祭りムードを演出しているようです。ほぼ全ての商品を自由に試せる化粧台が完備されているため、美容ファンの聖地としてSNSでも大きな話題を集めています。誰もが気軽に立ち寄れるエンタメ空間が、そこには広がっているのでしょう。
一見すると華やかなトレンドの発信地ですが、この店舗には目に見えない驚きの仕掛けが隠されています。専用のスマートフォンアプリとお店のシステムを連動させることで、遊びに来たお客さまの購入履歴や肌の悩み、さらには提供された試供品の利用データまでしっかりと把握できる仕組みです。店内でのお客さまの移動ルートや滞在時間も分析の対象となります。これによって、どの商品を手に取り、どれを肌に塗って、最終的に何を買ったのかが全て可視化されるわけです。
ここで注目したいのが「マーケティング」という専門用語です。これは、企業が顧客の求めている商品やサービスを調査し、効率よく届けるための仕組みを作る活動を指します。アイスタイルはこれまで、ネット通販のECサイトやWeb広告の収入によって順調に成長を遂げてきました。しかし同社の吉松徹郎社長は、これらに続く「第3の収益の柱」として、この実店舗から得られるリアルな消費者の動向データを化粧品メーカーなどへ提供する事業の強化を狙っています。
これまでも同社はWeb上の顧客情報を企業に提供していましたが、それだけでは世界的なIT巨人であるアメリカのグーグルやアマゾン・ドット・コムには対抗できないと社長は考えています。ネット通販の利便性がどれほど進化しても、やはり「実際に化粧品を肌に塗って試す」という体験はリアルの店舗でしか味わえません。実店舗でのリアルな行動データこそが、ネットの巨人たちに打ち勝つための強力な武器になると確信しているのでしょう。
吉松社長は、このデータ提供サービスの契約企業数を現在の約200社から、2021年06月期までに500社へと急増させる高い目標を掲げました。システム開発などの先行投資が必要となるものの、契約企業が増えれば「売上高営業利益率」が約30%に達する非常に儲かりやすい事業へと変貌する見込みです。売上高営業利益率とは、売り上げから経費を差し引いた本業の儲けの割合を示す指標であり、30%という数字は業界内でも異例の圧倒的な高収益を意味します。
一方で、市場の専門家からは「具体的な収益化の時期や効果が見えにくく、現時点では手放しに評価できない」という慎重な意見も出ています。しかし、私はこの挑戦に大きな可能性を感じてやみません。単にモノを売る場所から、消費者の「体験とデータ」を生み出す場所へとお店を進化させる試みは、今後の小売業界の教科書になるはずです。低迷が続く同社の株価を再び上昇させるためにも、この巨大店舗での実験が成功するかどうかが大きな試金石となるでしょう。
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